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「ぐぁっ」
勢い良く蹴破った扉は、近付いて来た方の男に当たったようだ
「な、貴様・・・!!」
僕が入って来た事に驚いる最後の男の所まで走り、勢いに任せて顔面を殴った
吹き飛んで行った男を見ながら、本当に自分は情けない存在だ。こんなにも簡単に制圧する事が出来る相手なのに、自分は無力だった
ただ手枷をつけられていただけだというのに
「・・・風見に連絡しないと」
男達を縛り上げて、連絡出来るものを探した。男の携帯を使い、風見に連絡を取った。色々と言われそうになったが、緊急事態なので、ここに来てもらう事にした
だが、Aくんの事を病院に運ばなければならない。その事を伝え、男達の車に彼を乗せ、最寄りの病院に向かった
緊急の手術が行われ、手術は数時間後に終わりを告げた
「彼の容態は?助かりますよね?」
手術中のランプが消え、出て来た医者に問い掛けた
「・・・命に別状はありません」
「命に別状は無い?彼は死に掛けていたんですよ!!?」
「我々も驚いているんです!!しかし、あの少年のバイタルは非常に安定しています。それは本当です。なので、今暫くは様子見になります」
そう言って、医者は去って行ったが、嘘を言っているようにも見えない
「あの状態で命に別状は無い・・・?」
彼は、酷い暴行をされた挙げ句、致命傷ではなくとも四ヶ所も刺され、長らく放置されていた。それなのに命に別状は無いと聞かされて、安心するよりも先にAくんの底知れぬ生命力に身震いした
しかし、今の自分にそんな事を考えるような資格は無い
彼が生きているという事に喜ばないと。そう思い直し、Aくんが運ばれた病室に向かった
病室には、静かに眠っている彼の姿。以前に入院した時よりも包帯やガーゼ、重々しい手当てが施されていた
結局、僕はAくんに守られてばかりだった。彼がなんと言おうとも、結果的に僕は無傷で助かっていた
ベッドの隣にあるイスに座り、彼の左手を握る
「お願いだ。君の本当の気持ちを教えてくれ・・・」
眠る彼に呟いた
Aくんの事が全く分からなかった
その夜は、眠れなかった
医者は命に別状は無いと言っていたが、寝て起きた時に、容態が急変して、彼が息を引き取るような事があったら嫌だった
朝を迎えても、彼の容態に変化は無かった
それどころか、
「あ、戻って来た。おはよ」
「おはようございます・・・って、目が覚めたんですか!!?」
風見に連絡を取る為に、少し病室を抜けた間に、彼は目を覚ましていた
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作成日時:2020年2月10日 22時