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｢何を考えているかは知らないけど、あの出来事はアンタには関係無い。当時のアンタに相談したところで、信じてもらえないし、いつかは起こっていた事だよ｣
僕を見たAくんがそう言ってくれたが、僕の苛立ちは拭えない
｢この話は終わり。お風呂にでも入って来る｣
｢･･･はい｣
彼は立ち上がり、お風呂場に向かって行く
いつかは起こっていた事、彼はそう言っていた。つまり、あの事件が起こる要因は、僕が関与出来ない部分にあったという事だ。彼は、当時の僕には信じてもらえないとも言っていた
｢上がったぞ｣
｢･･･Aくんは、どこで僕が、安室 透だと？｣
上がって来たAくんに、あの事件の事は置いておき、少し疑問に思っていた事を問い掛けた
｢同居人の名前ぐらい知ってる｣
｢教えた覚えは無いんですが･･･｣
｢教えてもらっては無いけど、知る方法はあるよ。その他の情報も仕入れようと思えば、何だって知れる。パソコンも無防備に置いてあるし｣
｢な･･･っ｣
チラリと隣の部屋を見た彼の発言に驚きが隠せない
｢気を付けた方が良いよ？僕に関しては｣
｢･･･いえ、僕はAくんを信じています｣
｢そっか。ありがとう｣
今度は彼が、お礼を言って笑った事に驚いた
｢何？｣
｢い、いえ、何でも･･･｣
力を抜いて溢れたAくんの笑みは綺麗なもので、男である僕でも少しだけ、目を奪われた。それは、彼が入院中に窓を開けて、本を読んでいた姿を見た時の感覚に似ていた
｢裏切らないでね。僕の事｣
｢勿論です。ただ、少しだけ断っておいても良いですか？｣
｢何を？｣
｢僕はあの事件の真実を知りたいと思っています。その時が来たら、君にも話を訊きたいです｣
そう伝えると、Aくんは怒る事はせず、何かを悩んでいるのか、考えているのか、指で唇に触れて、地面に視線を落としていた
｢その時が来たら、僕も言いたいね。その時が来たらだけど｣
｢良いんですか？｣
｢あの事件の真実を公にしても良いというのなら、僕は別に構わない。でも、忠告はしとく。その真実を知る前にアンタか僕、どちらかが命を落とす｣
僕の目を真っ直ぐ見詰めた彼はハッキリと言った
｢僕か、君か･･･？｣
｢その通り｣
｢どうして、｣
｢それはアンタが真実に追い付けた時に分かる｣
それはまるで、Aくんがいなくなってしまうような言い方だった
｢ま、期待してる。でも、目の前の目的を忘れずにな｣
｢･･･はい｣
少なくとも、今は彼の事を後回しにしなければならない事は事実だった
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作成日時：2020年2月10日 22時
