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「・・・そうですか」
「そうそう。僕の話は、今日みたいな事があったら、どうすれば良いのかっていう話ね」
今日の事は彼も想定外だったので、上手い言い訳を思い付けず、僕と親戚という事にした。しかし、今後はその嘘を確証のある嘘にしなければならない
「親戚って事で良いとして、名乗るのも安室で、一番の問題は僕の素性だよね」
随分と濃い内容の話をしているような気がしたが、Aくんは特に気にした様子も無く、ご飯を食べている
「・・・そうですね。恐らく、今日の一件で普通の高校生でいる事は難しいでしょうね」
「そうなの?」
「Aくんが出会った世良 真純さんという女性には、あまり変な事は言えないんですよ」
彼に、世良さんの事を教えておいた
「ふーん、探偵ね・・・」
「それなりに頭はキレるほうなので、気を付けた方が良いでしょうね」
「なるほど。一応、気にしておく」
それから、晩御飯を食べながら、僕の周辺にいる要注意人物を彼に教え、食事を終えた後に、Aくんの素性をどんなものにするかを考えた
「そう言えば、Aくんは何か格闘技などの経験があるんですか?」
「やった事は無いよ」
「そうですか・・・」
ひったくりを瞬間的に制圧した彼が格闘技の経験が無いというのには、引っ掛かりを感じたが、訊かないでおいた
「しかし、護身術ぐらいやっていたという話の方が良いでしょう」
「そうじゃないと辻褄が合わなくなるからな。僕はそれで良いよ。後は、・・・僕の親だけど、」
心底嫌そうな顔をした彼が言う
「あの時は、その辺で寝ていると言ってましたね」
「嘘は吐いてないでしょ。僕はアイツの墓の場所も知らなければ、母親の顔すら知らない」
「教えましょう、」
「僕がアイツの墓参り?虫酸が走るね」
僕の声を遮り、彼は鼻で笑って言った
どうして、そこまでAくんは、自分の父親を毛嫌いしているのかが分からない。毛嫌いというのかは分からないけど
「もう僕の親は、どっちもこの世にはいないって事で、この話は終わり。あと僕に守ってほしい事とかある?」
「絶対に誰にもAくん自身の本当の事を教えないでください。あと僕の事も」
「教えないよ。僕は信頼してない人には何も教えない主義だから」
彼がそう言った時、微かに胸の奥が痛くなった
昔のよしみだと言ってくれた彼は、本当に僕の事を信じていなかったという事を認識した。出会った当初から、僕の事を信じておらず、何も話してくれなかった
そして、あの事件が起きた
そう思うと、あの時の自分の無力さに腹が立ってしまう
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作成日時:2020年2月10日 22時