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｢出ましたよ｣
｢ん｣
洗い物を終えて、椅子に座っている彼は頬杖をつきながら、返事をした
｢･･･Aくんは、どうして、｣
｢暇だったからって答えた｣
｢ではなくて、僕は君の嫌いな種類の人間です。馴れ合う必要は無いはずですよ。勿論、仲直りする必要も｣
彼は、僕の言う通りにする必要は無く、むしろ反発されても文句は言えない。文句を言ったところで、僕は何も言えない
彼の機嫌を取れと上から言われるだけだ
｢まぁ僕自身からしたら、嬉しい事、｣
｢確かに｣
僕の言葉を遮った彼の言葉を待った
｢確かに、僕はアンタらの組織が大嫌いだ。なんなら憎んでる。でも、僕は子供じゃない。僕のワガママだけを通そうとは思わない｣
｢持ちつ持たれつ、という事ですか？｣
｢そういう事。･･･ま、僕はアンタ自体の事は嫌いじゃないから、それもある、かな｣
最後の方は声が小さくて聞き取りにくかったが、聞き取れてしまった
｢そうでしたか。僕もAくんの事、嫌いじゃないですよ｣
｢う、うるさいな!!昔のよしみだよ!!｣
また顔が少しばかり赤くなっている彼は怒鳴るように言うけれど、なんとも迫力に欠ける。無表情で睨まれた方が迫力があるというか、胸の奥に刺さる
｢それでも嬉しいです。もっとワガママを言って良いんですよ？｣
｢良いよ、もう。僕がワガママを言っても、嫌な態度を取っても、アンタは変わらない。それなら、少しでも前と同じ方が良いだろ｣
｢そうですね。君の優しいところは変わりませんね｣
そう言うと、Aくんは僕から視線を外して、何も言わなかった
｢僕は何一つ変わってないよ。アンタに出会った頃から何一つとして｣
｢･･･そうですか？｣
｢そうだよ。じゃ、僕もお風呂にでも入って来る｣
そう言って、彼は僕の横を通り過ぎ、お風呂場に向かって行った
｢変わらない、か･･･｣
Aくんは変わったと思う。優しいところは変わらないけれど、雰囲気、喋り方、性格も多少なりとも変わっている
｢あ、Aくん。服･･･｣
服を持って行っていないような気がして、どうするのかを訊こうと、彼の入って行った風呂場の扉開けた
開けた先では、彼が服を脱いでいて、彼は風呂場で服を脱ぐタイプの人なのだろうか、と考えていた
少しして、Aくんが僕に気が付き、大きく目を見開いていた
｢急に開けんな!!出てけ!!｣
｢す、すみません｣
怒鳴った彼に謝り、慌てて扉を閉めて、風呂場の近くから離れた。彼から声が掛かるのを奥の部屋で待った
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作成日時：2020年2月10日 22時
