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Aくんを見れば、こちらを強く睨んでいた。それは今まで見た中で、一番、殺気というものをまとっていた
「す、すみません・・・」
「帰れ」
「・・・はい」
彼から放たれた低い声に拒否する事は出来ず、病室を後にした
彼を放置する事も、逃げる事も出来ないので、次の日も病室には行ったけれど、相手にはしもらえなかった
返事をくれなくなった。喋る事すらもしなくなった
彼は完全に僕から心を閉ざしてしまった
「Aくん」
退院した後も、彼は何も喋らなかった。声を掛けても、返事は無くて、部屋の隅から動く事も少なくなった
「・・・学校の手続きと制服、必要なものは揃えたので、明後日から通ってくださいね」
そう言っても、彼は何も返事をしない
幸いな事と言えば、晩御飯をきちんと食べてくれた事だろう。前のように、いただきます、も、ご馳走様、とも言わなくなったが、手を合わせる事はしてくれた
「お風呂、どうぞ」
そう言えば、ちゃんと行動してくれる
「それでは、僕は仕事に行って来ますね。朝食はテーブルの上にあるので、良かったら食べてください」
部屋の隅にいる彼に言って、ポアロの業務に向かうべく、アパートを出た
「ふぅ・・・」
「ここのところ、安室さん、元気が無いですね」
「そうですか?」
「はい。溜め息にも似た息を吐いてます。それに、表情もどこか暗く感じます」
梓さんにも分かってしまう程だったようだ。気を付けなければ
「何かあったんですか?」
「少しだけ。でも、大丈夫ですよ」
「そうですか?私に何か出来る事があれば、言ってくださいね」
「分かりました」
笑って梓さんに返した
しかし、ポアロの業務を終えて、アパートに帰る。その足取りは重いが、帰らない訳にもいかない。家にいるAくんの為に晩御飯を用意して、明日の準備をして、
「ただいま帰りました・・・、Aくん・・・?」
色々考えながら、玄関のドアを開けると、Aくんがテーブルの近くに立っていて、彼の手にはお皿があった
「おかえり」
「あ、ただいま・・・えっと、Aくんは何を?」
「見て分からない?晩御飯を作ってたの」
呆れたような様子で彼は言った
「ど、どうしてですか?」
「暇だったから。帰って来たのなら、さっさと手でも洗って来て。冷めるだろ」
「僕の分もあるんですか?」
「一人分も二人分も変わらない」
そう言いながら、お味噌汁を作ったのか、鍋に入ったもにを器に移していた
「早く洗って来い」
「あ、はい・・・」
どういう訳なのか分からないが、彼の言った通りに手を洗いに行った
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作成日時:2020年2月10日 22時