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今は、彼の名前ですら漏洩してはいけないような状態であり、当時の事を蒸し返されると、色々と不具合が生じる
「彼の事を詮索するのは止めた方が良い。僕を敵に回したく無いのなら、尚更だ」
「・・・そうするよ」
コナンくんが諦めるとは思わないが、今回はそれ以上、話す事は無かった
「ここが彼の病室だよ」
「苗字は書いてないんだ」
「書いてないよ、残念だったね。さ、入ろう」
病室の扉を叩き、扉を開ける。開けた瞬間、風が吹き抜けて、目を閉じる。目を開けて、彼の事を見た
綺麗な姿勢で本を読んでいる彼の姿は、息を呑む程、絵になっていた
「アンタか。何の用?」
「あ、えーっと、メロン、持って来ましたよ」
ボーッと見詰めていた彼が、こちらに視線を向けて問い掛けて来たので、慌てて返した
「そっちのは?」
「ぼ、僕はお兄さんのお見舞いに!!」
コナンくんもボーッとしていたようで、ハッとした様子で返事をしていた
「切り分けますね」
「コイツのもな」
「はい。コナンくん、彼とお話ししててくれる?」
「うん」
頷いたコナンくんはAくんの隣に小走りで行った
自分は持って来たメロンを半分に切り、半分に切った片方を更に四つに切り分ける。切り分けたものをお皿に乗せて、彼とコナンくんに渡した
「どうぞ」
フォークを手渡すと、彼はそれを受け取り、サイドテーブルに置いたメロンを少しの間、見たかと思えば、お皿は半回転させた
「いただきます」
そして、右手でフォークを持ち、左側からメロンを食べ始めた
「ん、美味しい」
「それは良かったです。コナンくんも食べてね」
「うん、ありがとう」
それにしても、彼は左利きでは無かっただろうか?彼を引き取った初日のお昼の時にお箸を左手で持っていたように記憶している
だが、今の彼は右手でフォークを持っている
「アンタも食べれば?」
彼の事を考えていると声を掛けられ、視線を落とした。Aくんは、お皿に乗った二切れのメロンの内、一つを食べた彼はお皿をこちらに移動させて言っていた
「え、っと・・・」
「僕は後でもう半分食べる。要らないとか言わないよね?」
彼が僕を見上げて問い掛ける
「・・・いただきます」
断れるはずもなく、イスに座らせてもらい、メロンとフォークの乗ったお皿を貰う
「で、お前は僕のお見舞いに来て、何の得があるんだ」
メロンを食べるコナンくんに彼が訊く
「お見舞いに損得は無いと思うけど・・・」
「ま、そうだな。僕は何も話さないからな。必要な事は、そっちのに訊け」
そう言って、Aくんは僕の方を見た
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作成日時:2020年2月10日 22時