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「同僚の方と、か」
「はい。良かったじゃないですか。憧れの人と同じ判断を下せるなんて」
皮肉っぽくなったが、憧れている同僚と同じ体験を出来たのだから、零さんにとっては良い事だろう
「・・・あの人の気持ちがよく分かったよ」
「それは良かった」
「何がだ!!」
服を着ながら適当に返すと零さんは怒鳴った
「僕は君を止める為だけに、」
「零さん。その話は同僚にもされたので、結構です」
零さんの話を聞かず、着替えをパパッと済ませて、濡れた服をビニール袋に詰め込んだ
「さて、俺は電車で帰りましょうか?」
「寄り道をされても困るから、助手席に乗れ」
「はーい」
運転席に回った零さんが車に乗り込むのを確認してから、自分も助手席に座らせてもらった
「そう言えば、どうしてここが分かったんですか?」
「同僚の方に聞いた。家族との想い出の場所を知らないかと」
「なるほど。同僚も俺の事に気が付いていれば、簡単に口を割るでしょうからね」
それに俺を止めようと思うのなら、尚更、同僚は零さんに伝えてしまうだろう。余計な事を、と思ってしまう一方で、また同僚に助けられてしまったという思いもあった
「少し、寝ても良いですか?」
「構わない。着いたら起こすから、ゆっくりしていろ」
「ありがとうございます」
零さんの許可を得たので、車の中で眠らせてもらう事にした。眠りにつくと、浅い眠りで、夢を見た
幸せそうに前を歩く見覚えのある女性と女の子。その姿を見れただけで、少しだけ胸の苦しさが無くなった。それを本当に叶えられたらと思った
遠目に二人の事を見ていると、誰かに気が付いた女性は小さく、女の子は大きく手を振っていた
一体誰だろう、とその様子を見ていると歩いて来る誰か。その人にも見覚えがあった
「待って?それ赤井さんじゃない!!?」
二人に近付いて来た男の人に驚いて、飛び起きてしまった
「何を言っているんだ?」
「え、あー・・・何でもないっす」
車は赤信号で停まっていて、隣を見ると変な目で見て来る零さんに訊かれて、そう答えた
「赤井がどうかしたのか?」
「あ、いえ・・・少しだけ夢を見てて・・・」
「赤井の?」
零さんの質問に首を横に振った
「妻と娘の夢のはずだったんですけど、赤井さんが出て来て驚きました」
「何だ、その夢・・・」
「うーん・・・。でも、二人は凄く幸せそうに笑っていました」
自分以外にそんな風に笑い掛ける姿を見たら、嫉妬はするが、二人が幸せそうに笑っていられているのなら、それでも良いと思えた
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年12月24日 20時