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「志保ちゃんに聞きました?」
「ああ。お前と親の事は聞いている」
志保ちゃんには、色々な事を話してしまっているので、それが零さんに伝わっているのは分かっているが、裕也さんにまで、伝わっているようだ
「まさか、こんな形で役に立つとは思いませんでしたよ。裕也さんには薬の影響はありませんでしたか?」
「・・・医者に診てもらったが何も無かった」
「裕也さん?」
返事をする裕也さんの声色が暗くなったのが分かり、裕也さんの方を見た
「・・・上層部はAを退職させる気でいる」
「退職、ですか?」
「そうだ。お前に使われた薬は後遺症が残るようなものだった。だから、上はAの事を退職させるようにと」
「でも、俺に後遺症なんて・・・、」
自分には後遺症なんて、残っていないはずだ。自分の体の事は自分がよく分かっているので、そう言ったのだが裕也さんは、暗い表情のままだった
「確かに、この調子だと残っていないだろう」
「だったら、退職なんて、」
「そういう事では無いんだ」
言葉を遮って言った裕也さんは、唇を噛んでいた。その表情には、見覚えがあった。ずっと前に、刑務所で面会した時に同僚がしていた表情だ
そして、裕也さんの表情の意味が理解出来た時、スッと何かが冷めたような気がした
「退職ではなくて、ほとんど解雇ですよね。それって」
「・・・ああ」
「否定しない裕也さんが好きですよ」
しかし、このまま退職するのも、解雇されるのも嫌なものがある。恐らく、裕也さんは俺に退職を勧めるように言われて、ここにいるのだろう
「A」
「何ですか?」
「俺は上の判断に賛成だ」
笑って訊き返したけれど、裕也さんの言葉でその笑みが固まった
「どうしてですか?」
でもすぐに笑ったまま訊いた
「・・・俺はもう二度とAを危ない目に遭わせたく無いんだ。少しでも安心で安全に過ごしてほしい。だから、お前に退職を勧める」
真剣な目を向けて、裕也さんは言った
「そうですか。・・・考えておきます。後遺症が無いとも限りませんし」
「そうしてくれ。降谷さんには俺から話しておく。では、仕事に戻る」
「はい。裕也さん、ありがとうございました」
そう言って、部屋を出て行く、裕也さんの背中を笑って見送った
一人になった寝室で、溜め息を吐いた
「・・・二人に逢いに行こう」
その考えにいたるまで、そう時間は掛からなかった
その後、動かない体も問題なく動くようになって、何の後遺症も無く、いたって健康な俺は退職届を出した
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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年12月24日 20時