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「随分経ってるのに、まだ捕まってないんですね」
「どこの何の事件の誰の話をしているんだ」
独り言にも近い言葉にも風見さんは返事をくれる
「この事件、七年も経ってるのに。命を奪われた妻子の無念を晴らしてあげたいものです」
「そうだな。だが、この事件の犯人は別の案件で逮捕されていたと思うが・・・」
「もうすぐ出所しますよ、コイツ。だから、ここに資料があるんですね」
解決している案件の顔や名前を覚えるが必要はないはずだ。なのにあるという事は、コイツの事を公安は出所した後も監視するつもりだ
「別件で逮捕された奴は再犯の可能性が高いからな。問題ないと判断するまで監視するのは当たり前だろう」
「そうですね。さてとー、続きしよっと」
先程から見ていた資料を適当に放り、次の資料を目を通し始める。他にも気になった事件があれば、風見さんに訊こうと思っていたのだが、特に言うほど、目を引く事件は無かった
ただ、資料の中にここには関係無さそうな資料を見付けた
「変な資料が紛れてたんですけど、赤井 秀一って、誰です?」
「・・・俺も深くは知らない。降谷さんが調べているらしくてな。俺が降谷さんに返しておこう」
「ふぅーん、そうですか。それじゃあ、お願いします。それにしても、覚えやすい人相ですね」
ニット帽に目元の隈、モスグリーンの目の色。日系アメリカ人でFBI。一度見たら忘れるのも難しそうな人相だ。これで、警察だと言うのだから驚きが隠せない
「確かにな。とは言っても、赤井 秀一はFBIの切れ者で凄腕の狙撃手らしいから、あまり見掛けないんじゃないか?」
「狙撃手なら見掛けませんねぇ。気付いた時には、あの世って事ですか。おお、こわ」
「絶対、思ってないな」
「当たりです」
呆れた様子の風見さんに笑って返した
「これで終わりーっと」
最後の資料を紙の束に乗せて、イスの背凭れに体重を掛け、体を伸ばした
「ちゃんと覚えたか?」
「覚えましたって。これでも、記憶力は良い方なんですよ?」
「最初と言ってる事が違うぞ」
「そうでした?」
笑って言うと風見さんは溜め息を吐いて、諦めたように作業の続きをしている。その姿をボーッと見詰めていたが、コーヒーが飲みたくなって、風見さんにそれを伝えて、自販機に向かった
自販機の前に立って何を飲もうかと悩みながら、飲みたい候補の二つのスイッチを同時に押した
「えぇ、嘘ぉ・・・」
自販機から出て来た缶を見ると自分の候補ではない缶が出て来ていて、溜め息が出た
「風見さんにあげよう」
そういう事にして、新しくコーヒーを買った
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作成日時:2019年11月3日 21時