風見さんの新しい部下【男主】 (ページ13)

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｢さてと、最初は聞き込みですかね｣

この案件は少し前から着手していたらしいので、既に終わっていそうだったが、資料の情報の無さから察するに、ちゃんとした聞き込みは出来ていないと思われる

｢そうだな。対象の人物と接触したであろう女性に聞き込みをしたいのだが･･･｣
｢何か問題でも？｣

歯切れが悪い言い方をした風見さんに問い掛けた

｢以前にも話を聞きに行った奴がいるんだが、好みのタイプじゃないと言われて、断られたそうだ｣
｢うわぁ、嫌な感じ。俺が行っても断られそう｣

そんな女に今から会いに行かないといけないなんて、面倒な事この上ない。断られれば、また始めから捜査になってしまう

｢その女はどこに？｣
｢とあるバーによく現れるらしいんだが、我々が行って素直に応じてくれるかどうかは分からない｣

風見さんの言う通りである。それにそんな相手には正攻法では、上手く行かない事は明白だ

｢なら俺一人で行きますよ｣
｢薫衣が一人で？｣
｢はい。俺の方が馬鹿そうに見えるので、警戒はされないでしょう｣

頭の悪そうな女には頭の悪そうな自分が適任ではないかと風見さんに提案した。俺の提案に、風見さんはあまり乗る気は無さそうだが、他に良い案があるかどうかを訊くと、渋々、了承してくれた

｢まぁ任せてくださいよ｣
｢不安だ｣
｢あはは、大丈夫ですって｣

そう言って笑い、バーの場所を聞き、準備を済ませて、その女が現れる夜を待った

夜になり、風見さんとバーの近くで別れ、自分一人でバーに入った。ざっと店内を見渡し、話に出ていた女を探した。写真を見せてもらっていたので、すぐに見付ける事が出来た

｢隣、良いですか？｣
｢私？｣
｢はい。ここが一番、静かな場所のようなので｣

嘘では無かった

バーは思っているよりもざわざわとしており、静かなのは、対象の女の座る、カウンター席のみだった

｢ダメ、でしょうか？｣
｢･･･いいえ、構わないわ｣
｢良かった。ありがとうございます｣

女の隣に座り、一息ついた

｢お仕事帰り？｣
｢僕ですか？そうですよ。少し仕事で失敗してしまって、って何を言っているんでしょうね。初対面の女性にこんな･･･｣

女にそう言って笑う

｢良いじゃない。私、好きよ。人の話を聞くの｣
｢そうなんですか？でも、僕の話は面白く無いですよ｣
｢それは私が決める。だから話してみて、貴方の事｣

ね？と女は言いながら、バーカウンターに置かれた俺の手に触れて握った。女を見詰めると出会った頃から浮かべていた笑みを深めた