【usss】出来合いワンナイト・ラブ

【sm　end】like a sunflower ページ46

🍸️ 🍸️ 🍸️


会社の帰り、久々に寄り道した先は――

「久しぶり」
「いらっしゃい。センラと復縁したんか思ったけど、そうでもなかってんな。ここ、どうぞ」

志麻くんが出勤の日に、久々に飲みたいとだけしか連絡を入れてない。さて、私は覚悟を決めたけど彼は心を開いてくれるかな。そんな企みを胸に抱えているから、いつもより少し緊張して彼の前のカウンター席に座った。慣れた手つきで準備し出す志麻くん。多分いつもの作ろうとしてるよね。

「今日はアプリコットフィズ要らない」
「珍し。基本いっつも最初に飲むのに。じゃあ何作れば良い？そうや。Aが失踪しとう間に新しいオリジナルカクテル作ってんけど、飲んでみてくれん？」

それももちろん好奇心をそそられるけど。ごめんね、早速今日の本題に移らせて欲しい。

「志麻くんが今私に思っていることをカクテルで表して」

私の方がこのお店を利用している先輩とはいえ、当時の私は20歳になったばかり。自分がどこまでのアルコール度数の物を飲めるのか、何杯までいけるのか、どのお酒がどんな味をしているのか、右も左も分からなくて、悪酔いを起こすことも多かった。そんな時、彼が色々と教えてくれた。見習いを卒業して初めて作ってくれたのが、アプリコットフィズ。私はその飲みやすさですっかり気に入っていたんだけど、彼はずっと私にメッセージを発していたんだと、今更になって気づいた。アプリコットフィズのカクテル言葉は、「振り向いて」だから。ウイスキーにペルノー、レモンジュース･･･なんだろ、今まで見たことのない組み合わせ。

「これなんていうお酒？」
「モーニング・グローリー・フィズ。カクテル言葉は自分で調べて、言うのハズい」

そこは言葉でも伝えてよ。普段はズケズケと辛辣な癖に、こういう時に人見知り発動しないで。仕方なくスマホで検索してみると、

『あなたと明日を迎えたい』

一夜の関係だった私達にぴったりじゃん。私も志麻くんと朝を迎えたい。私はカクテルを口にした。ほんのり甘いし、まろやかな口当たりで美味しい。飲み切った私を見て、志麻くんはどこかほっとしているようだった。

「ほんまに、センラじゃなくて俺選んでくれたん･･･？」
「アプリコットフィズ断った時点で、自分の勝ち見えてたでしょ？どんな理由であれ、私を信頼してなかったのも、傷つけた事実も変わらないから」

センラくんとの恋を上書きしたんだから、惨めな思いさせないでよね？

〃→←〃

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す