【usss】出来合いワンナイト・ラブ

翻弄 ページ36

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定時に上がり、ふらりと志麻くんの働くバーに寄った。まだ時間が早いからか、私が一番乗りで他にお客さんはいなき。いつもならドアベルの音で気づいていらっしゃいと声をかけてくれるのに、今日はスマホをガン見していた。さては、マスターがいないからってーー

「勤務中にゲームしてたってマスターにチクっちゃおっかなー？」
「残念、チクりを考えるお子ちゃまなAちゃんと違って、俺はニュース読んどってん。ほら」

志麻くんのスマホ画面に目を落とすと、確かにネットニュースの画面だったけど内容は夏樹くんの熱愛疑惑について。全然真面目なニュースじゃないじゃん。真面目なニュースでも仕事中にチェックはアウトだけど。

「志麻くんって男性アイドルとか興味なさそうなのに、なんか意外」
「芸能界に興味さっぱりなAちゃんに比べればな。大抵の人間は有名アイドルのスキャンダルって気になるもんやで」

最近の若者は有名人の熱愛にあんまり興味ないってネットニュース読んだよって言ってやろうかと思ったけど、そこまで突っかかると可愛げのない女だと思われかねないと考えを改め、代わりに適当に何か作ってとオーダーした。熱愛記事を開いたままお酒を作り出した志麻くんは、よっぽど気になるんだな。

「その女性、雰囲気かな？なんとなくAちゃんに似てない？」
「まさか。アイドルが選んだ女の子はこんな夜のお店に来ない、ピュアピュアな可愛い子じゃない？」
「俺はAの方が綺麗と思うで」

コトリとグラスを置くのと同時に落とされた爆弾発言。今まで呼び捨てで呼ばれたことがなかったからか、心臓がうるさい。こんな汚れた身なのに、なんで綺麗だなんて。私は誤魔化すために話題を変えた。

「それより、いつになったら源氏名の由来教えてくれんの？」
「あぁ、ホストの？『太陽に向かって吠えるライオン』、かっこいいと思わん？」

自慢げに言っておきながら、なんでそんな悲しそうな顔をするの？見てるこっちまで切なくなってくるから、私はスマホに視線を落とした。ある通知を確認して、彼の言葉を遮る。

「なぁ、今夜ーー」
「ごめん、先約来ちゃった」

優雫ちゃん、今夜予定空いとう?

Twitt＊rのDM画面を志麻くんに見せ、カウンターに代金より多めにお金を出した。今夜付き合えない罪滅ぼしと美味しいお酒を作ってくれたお礼に。出ていこうとした私の腕を彼に掴まれた。

「俺より坂田を選ぶん？」

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