【usss】出来合いワンナイト・ラブ

新たな出会い ページ14

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「入り口ここ、だよね」

書類を見てあるお店の裏口を確認した。私は恋煩いを卒業するために、ホストクラブ通い以外にも新しいことを始めようと思い立った。うちの会社は割りと自由で、副業がOKだから副業を始めることに。まさかメイド喫茶OKしてくれるとは思っていなかったけど。あんまりきちんと申請書を担当の人が読んでなかったからかもしれない。

「雨夜Aです、今日はお忙しい中よろしくお願いします」
「そんなにかしこまらなくて良いよ！もう1人来るから、ちょっと待っててくれる？」

いつもの癖で、オーナーさんに馬鹿丁寧に挨拶してしまった。今日は働く前の研修みたいな説明会。どうやら同期がいるみたい。その人もこういうの初めてだったら良いなぁ。少しして部屋に入ってきた人物を、私はまじまじと見てしまった。赤い髪に苺色の瞳がよく目立つ、可愛い系イケメンだから。そうだ、ここ執事喫茶もやってるんだった。勝手に女の子だと想像していた自分がいたから、余計びっくりした。

「じゃあ揃ったし、始めるね。ここで使う名前、決めてくれた？」
「はい、先輩でいらっしゃらなければ雫でお願いします」
「あー･･･実は僕、まだ決めれてなくて」

確かに自分で決められなさそうなタイプに見える。私は被らなかったので雫で決定した。志麻くんが言ってたことが今よく分かる。SNSでメイド喫茶用のアカウントを作り、顔出しの写真を載せるから本名とかけ離れた名前が良いとオーナーさんに勧められた。なかなか決めない彼に、オーナーさんも困った様子。ならーー

「ゆう、ってどうですか？優しいって感じで」
「確かに彼に合ってるね。自分で考えられないなら、どう？」
「じゃあ、それでお願いします」

小一時間、仕事についての説明と出勤日を決定し、お開きとなった。帰ろうとカバンを持ち上げた私に、優さんが話しかけてきた。

「さっきはありがとうございます！名前、大切にします。良かったら相互フォローしませんか？」

あぁ、そういえばさっきさっそくメイドのアカウント作ったんだっけ。他のメイドさんや執事さんもいずれフォローするんだもん、済ませちゃおっかな。

「これが私のアカウントです」
「OK、IDで検索かけして･･･これですよね？」

こうして、同期の彼と繋がった。ただの同じ店で働くメイドと執事、全く同じタイミングで入った同期。それだけの関係で終わるとこの時の私は思っていたーー

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