アイス ／水上 ページ9
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「あーづい」
「ですね」
「なんで涼しい顔してるのか不思議だよ」
ソファでぐだ〜っと仰け反らせて座るAさん。
実はこの方とお会いするのは久々なのですが、顔の幼さは変わりません。
「水上さんだ！」とふんわり笑ってくれたAさんは、真夏にもかかわらずほんの少し、オアシスのような癒しになった気がします。
「アイス食べよ〜」
「あるの？」
「うん、昨日買ったよ」
家に引きこもるため外に出る用事の時に買わなきゃね。
Aさんが勝利セリフのように強気に言うと、るんるんスキップで冷凍庫へと向かう。
伊沢さんと買ってきたらしい複数のアイスの中から抽出したアイスはバニラアイス。
Aさんのお気に入りの棒アイスだと、昔伊沢さんが言ってたなあ。
「ふふん」
「Aさんが好きなやつだ」
「好きだよ〜」
完全にゆるゆるの頬に俺もつられてしまう。
「水上さんが笑った！」と某アルプスの赤い女の子のような調子で言うものだから、さらに笑ってしまった。慌てて麦茶で喉を潤すが、少しむせてしまった。
「ごほっ、ごほ」
「大丈夫？」
「うん。Aさんにつられちゃった」
「あくびみたいだね！」
はやいスピードで溶け出すバニラアイスをすくうように食べるAさんがあははっとおてんばにかわいらしく笑った。
棒に垂れそうなバニラアイスをギリギリで舐めて「危な」と言葉をこぼす。
一気に食べちゃえばいいのになーと思うけれど、頭痛くなるもんね。うーん。
じいーっとアイス……というか、Aさんを見ていると、気づいたAさんが聞いてきた。
「水上さんもアイス食べる？」
「うん、食べようかなぁ。甘いもの食べたくなってきた」
「休憩も必要だよね。持って来る！」
立ち上がろうとしたAさんの細い腕を軽く掴む。
そして、そのままそっと引き寄せてAさんの手にある溶けかけたバニラアイスを一口食べた。
「おいしいね」
「……え、あの……」
「ありがと、Aさん。……アイス溶けちゃうよ？」
ふっ、と鼻で笑ってやると「水上さん！！」と怒られた。
あれー、俺何か間違えましたか〜。……Aさんのアイスくれるのかと思いました。
なんてね。口の中が甘ったるいけど、心の中はドキドキものです。
暑い暑い夏のある1日でしたね。
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