あだ名 ／こうちゃん ページ7
.
「ライターのこうちゃんです」
「君はこうちゃんじゃない。俺こそ真のこうちゃんだ」
「何やってるの君ら」
Aちゃんと茶番をしていたら須貝さんに突っ込まれてしまった。
でも、俺の自己紹介のモノマネで前髪をくしゃっと雑にあげるAちゃんは愛らしいよお。
「こうちゃー」
「ちゃんとこうちゃんって呼んでよ！」
たぶん、AちゃんがQuizKnockの中であだ名で呼んでるのは俺だけ。
まあ、他の人と差をつけるために全力で「こうちゃんって呼んで！」ってお願いを繰り返したら最近、呼んでくれるようになったけれどね。
照れ隠しなのか“こうちゃん”って最後まで呼んでくれないところ。俺的にはすごいかわいいと思うんだけど。
「Aちゃん、問題です」
「はーい」
「みんなが好きなスポーツってなんだ？」
「スキー！ なんか小学生向けじゃない？」
「いいんだよ！」
後ろの方で伊沢さんが「そっちかああ！」と頭を抱えた。
遊戯王で負けてもこういう戦略では勝っちゃうんだなあ。
「じゃ、私もこうちゃーに問題です」
「はい？」
「私は今何を考えているでしょーか」
「えー、難しい」
「めがねかけて答える？」
本気モードこうちゃんはいいかなあ。いつもにっこにこのAちゃんだもの。
考えてることなんてお菓子食べたいなんじゃないの？
そう問いかけてみたけど首を振ってどや顔。
「違います」
「違うの？ Aちゃんなんて『お菓子食べたい』か『伊沢さん〜』とかいつもそんな感じじゃん？ 俺の言ってることは間違ってないよ」
「正解はねむたいでした！ 私ってそんな感じ？」
首をかしげる仕草に思わずドキッとする。
首筋にかかる髪がさらりとするのを、俺は息をのんで見届けようとしたがAちゃんが肩を叩いて俺を呼び起こす。危ない、どこかいってしまうところだった。
どこかへいってしまう？ 俺はどこへ行こうとしていたの？
「こうちゃーん」
「えっ。Aちゃん、今」
「こうちゃーどうしたの？」
にやにやしながら聞いてくるAちゃん。今こうちゃんって呼んだよね！？
わかってるんだなあ、これが！ だから河村さんから小悪魔って言われるんだよ！
……あれ、悪女だっけ？ どっちにしてもAちゃんなのは変わりないよね。
でも、ほんのり赤くなった彼女の頬を見ると、俺もちょっと誇らしくなっちゃって。
ついからかっちゃいそうになる、ドクドクした心臓の音がうるさくて仕方ないんだよ！
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 227人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
