本当にあった ／ふくらP ページ25
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「ふくらさーん」
「……どうしたの、そんな笑顔で」
「編集終わり？」
「他はAちゃんの仕上げだよ」
「じゃあ、テレビの前に座ってくださいー」
「シャットダウンするからちょっと待って」
編集を途中で切ってAちゃんにデータを渡す。
そして、促されるままテレビの前に座らされて、やがて、テレビのリモコンをいじるAちゃんが隣に座った。
「何見るの？」
「怖い話」
「えっ」
「怖い話」
僕がその場から逃げ出そうとすると、立ち上がる前に
Aちゃんは腕をがっしり掴んで離さない。
上目遣いでこちらを見るので少し揺らぐ。
いや、怖いって。それあれでしょ、本当にあったやつでしょ。
知ってる、この前2秒だけ見た。嫌だって。
「あの、僕怖いの苦手です」
「うん」
「悪魔でしょ！ 悪女とか小悪魔とかかわいいことみんなから言われてるけど、極悪人だよ〜！！ うわああ、やだ、怖いってぇ……」
「みんな誘ったら『ふくらさんがいいよ』って。だからみんなが極悪人説あるよねー」
そう言ってぐいっと僕の腕を引き寄せて絶対に離れないようにする。
Aちゃんのせいでくっついてるんですけど、ドキドキしちゃうんですけど！
華者って言われる僕でも流石にAちゃんよりは力が強いので振り払ったり押し倒したりすりゃAちゃんの側から離れて怖い話回避！ はできるんだけどね。
僕の何かが離れることを拒絶してるよ〜。
Aちゃんの髪から匂うシャンプーの香りが、まるで僕を落ち着かせるように。
ふわって香らせるのやめてほしい。今日はいつもより近いから、より一層強く思う。
「ほんとに見るの」
「ふくらさんは見るのやだ？」
「やだ！」
「じゃあ一個だけ一緒に見よ？」
「う……。……い、い、いいよ」
「やった」
慣れた操作で録画を再生する。
あーあーあー怖いよー。僕も自然にくっついちゃうけどなんていうか。
まあ言い訳できないや。でも何か言われたら今回はみんなのせいにできる。
葛藤でいっぱいだけど、こんなチャンスないから。でも、怖い話だけはもう嫌だ！
「はあぁ、怖かった」
「ちょ、ちょっと怖かった……意外……」
「Aちゃん怖いの得意とかじゃないの？」
「いや、みんなで見れば怖くないかなって思ってたんだよー。そしたら、『ふくらさんと見て一緒に怖がってこいよ』って」
「それ伊沢でしょ。絶対許さない。……ぞわぞわあってくる怖さだった。もう見たくないよ……」
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