誕生日 /ふくらP ページ15
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「ふくらさん! お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう、Aちゃん!」
部屋に入るやすぐに明るいBGMが流れ、うたを歌いながら登場するAちゃんが、「でぃあふくらぴー」と呂律がしっかりしてない言葉で綴るお祝いの言葉。
少し乱雑に、それでもAちゃんぽいと許されてしまう渡し方で受け取るプレゼントらしきもの。
僕には一気に全部が贈られた。
「てっきり伊沢さんと一緒にお祝いするのだと思ってたよ」
「そう? まあ生放送の時はその場にいなかったしねー」
「でも、いつも伊沢さんとずっと一緒だよね?」
「今日の主役はふくらさんだからそっち優先ー!」
言いたくないこともぽろぽろ出てくる口をAちゃんが押さえてくれるが如く強く背中を押されていつものソファに座るように促された。
「さて、ふくらさんは何食べたい?」
「え? 用意されてるものではないの?」
「今から作る」
てっきり作っているものかと。
言おうとした時には既に青いエプロンを着して、髪を束ねている最中だった。
「人妻みたい」
「これから未来永劫ある女の子にそんなこと言わないでーって、褒められたの?」
「どうだろーね」
また嫉妬かなぁ。なんてね。
伊沢さんの隣にいつもいるから、今日は独占しちゃっていいのかなー? なんて悪い気がしなくもないけれど、多分伊沢さんも裏では手伝ってくれているんだろうなぁ。
はやく! と急かすAちゃんに、「Aちゃんのはなんでもおいしいって知ってるから、なんでもいいよ」と言うと、お得意のはにかみ笑顔をみせて、承諾した。
「まずいの作ろうかなー」
「ええ? やめてよー。なんでもおいしいって言ったのが悪かった?」
「冗談ですー! 折角のお誕生日なのにまずくする理由がない! Aの腕をふるいます」
「わあ、楽しみ」と言うと、「棒読みだね、でも自然と声に出しちゃうくらい絶品の料理を食べさせてあげるからねー」と言いながらキッチンへ足を運ぶAちゃん。
それだけで、なんて嬉しいことか。
微かに香る甘い匂いがすでにケーキの存在を知らしているが、隠してるんだろうなぁ。
嬉しさでドキドキしてしまう、頬が熱い。
まるで夢みたい。夢なら、覚めないでほしい。
そう思ってしまうほどにここの空間は心地が良くて、そして、幸せで。
ずっとこのままでいられたらいいなーと、いつまでも、いつまでも、思ってしまう今日でした。
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