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「寝ちゃったね」
「疲れてたんだよ。主にAちゃんの追っかけで」
「ひ弱だなー」
会心の笑顔を見せるAちゃんの助手席に今にも寝そうな眠気でぼーっとする俺、伊沢拓司です。
そのあと水上が(多分欲を抑えて)Aちゃんを捕まえて、最後に写真を撮ってあの場所を後にした、帰路。
Aちゃんの車で帰宅途中なのですが、長距離移動と車の揺れ、それに加えて久々にはしゃいで疲れた彼らが強烈な眠気に襲われて後ろの席で仲良く寝ております。
「寝ていいよ」とAちゃんには言われているもの、強気になって眠れない俺はぐだぐだとAちゃんの話に付き合っています。
「明日は筋肉痛か〜」
「筋肉痛になったら痛いとこ押したげるよ」
「仕返すからね」
「やだなー。伊沢さんとはクイズでも勝てないからここで勝っとかないと」
得意げ呟いた後、「クイズでも勝ちたいんだけどね？」と付け足したAちゃん。
「Aちゃんの作る問題はだいぶ凝ってるから好きだよ」
「答えたいじゃん」
「須貝さんみたく早押しが苦手なだけだから、知識としては俺らと一緒だと思うよ」
「じゃ、クイズ王スタンドよろ。私も河村さん倒したいな」
「あははっ、東大主じゃ早押しは鶴崎に負けてるけどね」
過去の動画を交えながら話をしていると、Aちゃんが小さくあくびをした。
「眠い？」
「平気ー」
「ちょっと休憩しよっか。売店寄る？」
「いや……」
「寄ろう。俺が寄りたいから」
「……わがままだなあ」
眠たそうに目をこすりながらやれやれ、というふうに力なく笑ったAちゃんは、近くのコンビニを見つけるとそこの駐車場に車をとめた。
「Aちゃん何食べたい？」
「えー、伊沢さんの食べたいの食べなよ」
「あんなにはしゃいだしお腹すいたでしょ。たまには先輩の言うこと聞いておきなよ」
俺がそう言うとAちゃんは少し悩んで、パンをカゴの中に入れた。
「今日のお礼」とジュースを手渡すと、「私の方こそありがと」と照れ臭そうにはにかんだ。
「また伊沢さんに惚れちゃうよ」
「いいよ？ いつでも俺のところおいで」
「冗談だってー。そういうの言わないでね」
「……俺はいつだって本気だよ」
はっきりしない喋りは、彼女には届いてないんだろうな。
それでも彼女の耳は赤く見えて、期待してしまう女々しい俺は嫌いかな。
Aの好きな俺じゃなくて、ごめんね。
……なんて、今日は考える1日でした。
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