ふくらさん ページ9
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「まま〜〜〜〜〜」
「けんはAのママじゃありません！」
「祥彰くんがぱぱ……」
「えっ」
突然名前を呼ばれて心臓がどくんと鳴る。
ふくらさんに抱きついているAちゃんは、幼稚園児みたいに甘えたさんだ。実はこれ、ふくらさんだけの特権。ふくらさんはママを存分に出すし、Aちゃんは存分に甘えられるし、僕も癒されるし、つまり、みんな許している。
さらに言えば、僕のことを「パパ」と呼ぶのも「祥彰」と呼ぶのも大抵この時だけ。
嬉しいでいいのかな。この前伊沢さんに、「俺が彼氏なら超嫉妬するんだけど！」と言われたが。
「もー、山本はいいのー？」
「癒しじゃないですか？ あれ」
「癒しだけど……いや、癒し？ うーん？
いや、でも、Aちゃんの彼氏は山本だよ？」
「そっか。ガツンと言うべきなんですかね……」
「行け、行け！ 今じゃ！」
おじさん口調の伊沢さんが見えないうちに背中を押され2人の前に出る。
本当に親子みたいだなあ……なんて言おうとしたけどそれこそ後ろの伊沢さんに殴られそう。なんで伊沢さんに殴られるんだろ。え、うーん。あのー。僕はしどろもどろになりながら言葉を綴る。いや、なんで僕が言いずらそうにしているんだろう。
「あの、Aちゃん？」
「ん？」
「あのー……その、彼氏の僕がいるから……えっと」
「うん？」
「……んー……。やっぱいいよ。そのままがいい」
「えっ、待って山本さん！ なんで言わないの！」
「そーだよ山本！ どういうこと！？」
「ええ、いや！ 何もないです！！」
慌てふためくオフィスの中。
そりゃあもう、部外者としてそこにいた川上さんは頬づえをついていたのだが、ずれてしまうほど。はて、僕、変なこと言ったかな。
深くため息をつくふくらさんが、小さな声でそう言ったのを聞きとった。
「ままはこの関係、耐えらんないよ〜」
でも、楽しそうに。
それにAちゃんも伊沢さんもうんうんと肩を組むほど。
ふくらさんは、僕たちを見守る母親……的な感じ。
でも、これは伊沢さんや、ふくらさん自身が言ってたこと。僕には、母性を全く感じないのだが、どういうことだろう……？
「山本、嫉妬とかしないね」
「SNSだと割とあるんだけど……」
「僕、男だと思われてない？」
「ふくらさんのこと、ままだと思ってるかな」
「えぇ……。せめて福良拳でいかせてよ〜」
ふくらさんは、僕たちの、……うーん……。
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