須貝さん ページ8
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「山本さんじゃん！ 最近の調子どうよ？」
「あー。何もないですよ？」
「なんで笑って……やっぱりあるよね？ 今日水瀬来る？」
「一応来るけど……」
「聞いちゃお。『山本さんって積極的〜？』」
「やめてくださいよ！！」
QKライターがオフィスに集まる某日。
一足先に僕と伊沢さんとふくらさんがいると、4番乗りで来たのは須貝さんだった。
須貝さんは僕を見るなりキラキラと目を光らせて、僕とAちゃんとの進捗を聞いて来るのはいつものことだ。でも、それに引っかかって頬が赤くなるのは僕の悪いところだ。
別に、やましいことなんて何もないです。
ええ、ないです。
「奥手だよね、山本さん」
「そんなことないと思ってるんですけどねー？」
「俺たちもそう思うんだよね。見ててドキドキもんだよね」
「恋愛漫画よりドキドキするよ！」
ふくらさんも恋愛漫画読むんだ、なんて。あの。僕は時期をおいてるとかそういうわけじゃなくてですねー。と必死こいて弁解していると、「幸せもんだね」と須貝さんににっこりと笑われた。
この幸せ、わかるもんなんだなぁ。
しみじみと思っていると、震えた僕のスマートフォン。
通知とともにメッセージが画面に流れて、須貝さんがそれを見る。
「Aちゃんじゃーん」
「今日のことです！」
「気になる！」
「見せてー！」
「ふくらさん！ 伊沢さんまで！」
と、みんながみんな顔を寄せて僕の画面を見る。
水瀬山本くん、もう集まってたら聞いてほしんだけど、必要なものあるー?
「まじ水瀬」
「変わらないAちゃん……」
「変わらない吸引力みたいに言うな」
「……あの、必要なものあります？」
と、言っても。飲み物とか、今日は俺が買ってきてしまったからなあ。
伊沢さんがそう言うと、あ！ と、須貝さんが声をあげ、僕のスマホを取り上げた。
「え。ちょ、須貝さん！」
「Aちゃんが足りない……っと」
「須貝さん〜……！」
「顔真っ赤だなあ」
「待って！」
「まだ送ってないよ〜。打ってはあるけどね。ふふ、送るかな〜？」
「送りませっ……あ」
「あ」
焦って削除ボタンと送信ボタンを間違える僕と、
呆気にとられる須貝さんと、
クスクス笑いあっている伊沢さんとふくらさん。
水瀬山本くんらしくないね。りょーかい。待っててね
──僕たちにとっての須貝さんは、距離を縮めてくれるキューピット……的な？
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