誕生日 ページ45
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「これで君の誕生日を祝ったのは2回目だね」
目を細めて笑ったAちゃんは、徐に立ち上がりキッチンの方へ消えていった。
6/1。僕、山本祥彰の誕生日。
正確には数日過ぎてしまったのだが、当日には現代の進化の賜物であるメッケージアプリから「お誕生日おめでとう」の印を頂いているので今日はおまけのようなものだと思っている。
ふと向けたカレンダーには、1日の枠にオレンジ色のペンでハートが描かれているのを見て気分がよくなる。同じ四角の枠には山本くん、と添えられている。きっとこれをご両親も見たんだろうなあと想像すると笑えるくらい恥ずかしいのだが、今の気持ちが幸せで、熱を持った頬を冷やすように手を頬に当てた。
今日は彼女の実家にいる。なんでも僕のことをかっていただいているご両親から特に歓迎したいとのことで向かい入れてくれた。故に日付がずらされたに近いのだが、先ほど「おまけ」としたが実は一つの大きなイベントだったりもして緊張はしていた。が、今は吹っ切れたようにのんびりできる。少し張り詰めた心の糸があるにしろ、彼女がいるだけで幸せであったのは間違いないからだ。
「じゃーん！ ケーキ！」
「すごい！ Aちゃんが作ったの？」
「ばれた？ あのね、ここのチョコのプレートあるじゃん。私が書いたんだよー」
やまもとくん。
ひらがなで書かれた名前。思わず突っ込みたくもなるが、ここは我慢しようと口を結ぶ。今日くらいは祥彰って呼んでくれてもいいんじゃないですか？ とAちゃんに聞くと、呆れたように苦笑を浮かべながら首を振って、小さな声で「よしあきくん」と僕の名前を呼んだ。
6月のはじめ、まるで夏の始まりかとサイレンを鳴らすように高い気温が続く。雨がふりもしないくせに暑いだなんてなあ。エコモードのエアコンは休みを続け、今働いているのは扇風機のみである。首を振って時々当たる風は暑さを忘れさせてくれる。それと、彼女のなびく髪が、なんだか涼さを与えてくれる。へんなの。
「おめでとう、祥彰くん。今日は君にとっての素晴らしい日になったかな？」
「Aちゃんがいるだけで幸せだよ」
隣に座った彼女の手と手を絡ませて、引き寄せてからキスをした。驚いたのか微力に強くなった手の力も、次第にほぐれて、僕たちはもう一度繰り返した。まだ慣れてないから恥ずかしいね。
あなたしかいないんだ。
僕をいちばんにわかってくれるなんて。
いつもありがとう。
好き。
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