最強 ページ4
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「山本とAちゃんのクイズタッグは最強だね」
そう、伊沢さんに太鼓判を押されたことがある。
僕らはあくまで一般人。社会では高学歴に含まれるのかもしれないけれど、Aちゃんなんて「底辺に当たる成績から這い上がって来た」と自虐してしまうほどどこにでもいる高校生だったのが、突然高学歴と言われてしまえば、過程に含まれる血が滲むほどの努力が見られていないと思ってしまうくらい上げられるのだ。
だから、Aちゃんはソロ動画を作った。利己主義なるものだったけれど、動画は人気だったし、水瀬Aという名前が広まった瞬間ではあった。質問も水瀬Aという人物についてもちょくちょく見かける。
「山本さんとの進捗を教えてください！」と来ていたあたり、こういう質問も多いのかなあと思ってしまうけれど、でも、彼女のSNSはいつも自由なので、たまに僕の情報ものっけてファンの中では楽しんでもらっているっぽい。きちんと質問は見ているってところが好感を持てる。
「今度一緒にクイズしようか」
「僕と？」
「山本くん以外誰がいんのさ」
「たまに思うけれど、僕じゃなくてもいいやって思うことがないの？」
「ないよ」
3文字で他者を拒否する。と、同時に僕を応諾した。
目を細めて顔一面に満悦らしい笑みを浮かべる。
僕はこの笑顔に惚れたんだなあと胸の内がぽかぽかと暖かくなる。
「じゃあ、やろうか。相手は誰なの？」
「伊沢さんと水上さんと鶴崎さん」
「強敵じゃん」
「でも、リベンジしたいもんね」
僕たち2人は伊沢さん、水上さん、鶴崎さんの3人がメインで出演していた頃の番組に大学を背負ってクイズ番組に出演したことがある。決勝まで持ち込んだが、破れたのだ。あまり勝負事が得意ではないと言うAちゃんも、こればかりは悔しいとずっと言っていて、伊沢さんも「また挑戦しなよ」と悦に浸っていたのを僕は見ている。
「今から宣戦布告だ。
『次会ったら山本くんとクイズ対決させて』……っと」
「早いなあ」
「早めに、ね。みんな忙しいからさ」
「……まあ、僕らも目の前の課題片付けないとね」
「……代わりにやってもいいよ」
「僕はこっちやるので、Aちゃんはこっちをやってくださーい」
「絶対山本くんより早く終わらせるからね！」
課題も苦痛に思わないのは、Aちゃんのおかげなんだろうなあ。
僕たちは、同時にノックをした。
カチッと鳴ったボールペンが、蛍光灯に照らされて光った。
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