プライド ページ30
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「あ」
「ん？」
「水上さんに連絡するの忘れてた」
「……水上さん、最近絶好調だね」
「ん？ うん。なんか新しいことやってるね」
座っていたソファを離れてAちゃんはリビングに充電しっぱなしのスマートフォンを取りに行く。僕は後ろ姿を目で追った後、何を思ったか水上さんのSNSアカウントを開いていた。
──『這いつくばってきた女王様』だからね。たくさん甘やかして優しくしてあげてね。
そして、過去に言われたこと。TVとはまた違う、力のない笑みを浮かべられたこと。
思い出してため息をついてしまった。
と、ここで帰ってきたAちゃん。片手にはスマートフォンと充電コード。
「最近水上さんと会ってるの？」
「会ってないかな。一昨日くらいに鶴崎さんと会ったけど」
「鶴崎さん？」
「うん。……あ、そう、だからお出かけできなかったん。ごめんね」
「いいよ、全然」
僕は少し前にAちゃんと気になってたお店に行こうと誘ったが用事があるとのことで断られたのだ。理由は明確にしていなかったので今知ったのだが、僕じゃなくて鶴崎さんと会ったんだなあと思うと少し胸が苦しくなる。こんなの、わがままだけど。珍しくぽかぽかだったあの日、結局一人でお店に行ったことを思い出してまたため息をついた。
「幸せ逃げるよー」
誰のせいだと思ってるの。
理不尽な怒りをどこかぶつけるとしたらAちゃんしかいなくて。
水上さんのSNSアカウントのページを離れると次は僕のアカウントに移る。『ねむい』と書きこんだツイートはAちゃんの方にも通知として届き、僕の方を見て首を傾げた。そして、今まで頸を見せていた彼女は先ほどスマートフォンを取りに行く前の、僕から一人分空けた位置に座った。
「……山本くんらしくない。どうしたの」
「何がですかあー」
「なんか拗ねてる？」
「……なんでもー」
「不貞腐れてるの？」
そうやって頬をつねろうとして僕の顔に伸びたAちゃんの手を反射でとってしまった。え、と驚いた顔をしたのも束の間、僕は腕を思いっきり引いてこちらへ寄せると、Aちゃんはバランスを崩す。そうして僕に倒れこんだ時、ようやく、目と鼻の先にあるAちゃんの目線が交わった。
「な、なんですか」
「……」
「あ、の。恥ずかしいので……力緩めたらこれこそちゅーしちゃ」
「すればいーじゃんっ」
「え」
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