大掃除 ページ24
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結果から申し上げるに、Aちゃんは大掃除が苦手だ。
懐かしいものを引っ張り出して読み耽っちゃうみたい。例えば、漫画とか。「うわー！ 懐かしい！」なんて言いながらパラパラパラと横になって読み始めたのを、僕は取り上げて本を床に既に並んでいる本の間にさらに並べてった。
「こら、Aちゃんのお部屋なんだから」
「うー。やりたくないなー」
「Aちゃんの幼少期の写真とか見つけちゃおうかな」
「だめ」
すぐさま立ち上がってとある一点をぐるぐるし始めるAちゃん。わかりやすいなあ。その点は触れないようにして手に持っていた参考書の山を丁寧に床に並べていった。Aちゃんも片付けをし始めた。一つずつ丁寧にしているところがちょっとだけ意外だけど、日も暮れちゃうからテキパキとやらないとね。
今日は、Aちゃんのものを少なくするために来た。僕は埼玉から出ていることもあって一人暮らしなんだけれど、Aちゃんは西早稲田に住む実家暮らしの大学生だ。まさに駅近で、僕のキャンパスが一番近いんだけれども、彼女に理工学は合わないらしい。できないわけではないらしいから、ほんとハイスペック彼女。僕も漢検取ってるし負けてられないけれど！
「山本くんー」
「んー？」
「ねむい」
「僕も眠くなるからー」
「どういうことー」
この会話が眠くなるんだよなあ〜。僕が本並べ終わったら次Aちゃんの番なんだからね。作業していると部屋にあるすべての本が並んだみたい。寝っ転がってうとうとしてるAちゃんの腕をぐいって引っ張り起き上がらせると、選考させる。僕らは4年生なんだから、準備しなきゃダメなんです。きっと彼女もわかっているけれど、その実感がわかないのだろう。僕だってそうだ。そうだけど、彼女以上にわくわくはしている。うざいかな〜。でも、ワクワクしているのはAちゃんのせいなんだけどね。
「この本懐かしい！」
「わー！ それ僕も使ってた。ぼろぼろじゃん」
「そりゃ底辺のような学力だった私はぼろぼろになるまで使わないとここまで来れないよ」
ニヤッと、でもどこか寂しげに語ったAちゃん。そうだ、彼女の学歴は並べてしまえばすさまじいものだ。とんでもないものだ。この部屋は、彼女が必死に勉強した軌跡の一つなのだ。そう考えるとゆっくりのんびり、日が落ちようとも思い出に浸りながら大掃除をするのも悪くないなあ、と思った。これも、Aちゃんのおかげかな。
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