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「幸せって簡単に感じられるものなんだね」
25日の夜、Aちゃんはちびちびとお酒を飲みながら頬を染めながら僕に問うように言った。僕だって、今すんごく幸せだ。そんなことを伝えると“どこの国語の教科書？”と僕を茶化したが、僕にはそのツッコミがよくわかんなかったので、失笑してしまった。でもなんだか面白かった。酔ってんなあ。SNSにそう書き込むとたくさんのリプライが来たが、1つ目立つように通知を送ってきた人がいたのでそれに返信する。
「おさけ、じゃないよ。もー」
「ふふ、幸せだね。
山本くん独り占めしちゃってるよ」
「……も、もー！」
かわいいからだめ！
なんてそんなこと言えないけど！
恥ずかしくてスマートフォンの画面を見ると、僕宛に河村さんから「水瀬呑みすぎるなよ」とお咎めのリプライがきていることに気づく。相性悪い人だ。思考が回らない僕の頭ではそれくらいしか思えなかったが、僕よりもぼんやりしているであろうAちゃんは丁寧に返信をした。
@水瀬〉@河村
よってません
@河村〉@水瀬
おはなしできるひととこうたいしてください。
ひらがなだったらわかるかな？
「年明け覚悟しとけ河村拓哉さん」
「『さん』」
「クイズで返り血にしてやる！」
「それAちゃんが死んでる！
てかクイズで返り血ってどういうこと！？」
酔ってたや。
Aちゃんはお酒が可もなく不可もなくって感じで飲む。酔うか酔わないか微妙。でも、今日はちょっと特別な日だから、Aちゃんは楽しそうに飲んでいた。いやあ、ご飯や飲み物を嗜んでいる様子を見ててこんなに嬉しくなるのって、Aちゃんだけだなあなんてしみじみと思う。
しばらくして、Aちゃんはケーキを両手でせっせと運んできた。真ん中に刺されたサンタクロースとトナカイのフィギュアがなんだか楽しそうに踊っているように見える。
「入刀！」
「もう、危ないよ〜」
「ケーキあげるよ」
「一切れが大きいなあ！」
なんだかはっちゃけてるAちゃんが本当に可愛らしくて、僕も心が浮かれるようだ。
ロウソクに火を灯して、誰かの生誕を──いや──今日は騙される日だから、Aちゃんと僕の幸せを願って……なんて甘ったるく恋人っぽいことを願って──暗くなった闇の中、火が灯る先端に向けて、勢いよく息を吐いた。
拍手の中、ぼんやりと消えていく灰色の煙が、ゆっくりと溶けていった。
来年も、この日はAちゃんと一緒がいいな。
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