クリスマス ページ19
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「日本はクリスマスを誤認して楽しんでるから、わたしたちもクリスマスくらい誤認して楽しもうか」
Aちゃんがクリスマス前週の日曜日に言ったことだ。その中にはむしろ楽しまないの！？ と驚く伊沢さんや、ケーキの予約とっちゃった！ と相変わらずQKのママ、ふくらさんが声を上げた。
クリスマス周辺は予定があるのに、クリスマスになると予定がぽっかり空く。
その日は街が色々な光で散りばめられて、お店は赤と白と緑でちかちかと彩られる。鈴の音と共にクリスマスソングが奏でられ、両手に大きな袋を抱えて奮闘する親、せっせとサンタさんに手紙を綴る子供、雪が降ればホワイトクリスマス。
なんて、きれいですてきな日本のクリスマス。
僕だって、幼い頃は毎年楽しみに「今年はなんのプレゼントを貰おうかな」と考えたものだ。今考えてみると、ものすごく都合のいい文化だと思うが、これも楽しめたのは日本がクリスマスを誤認しているからだ。
しかし、知識の一つ一つ、量を競い合っている僕らは、オリジナルを蓄えている。したがって、日本がクリスマスを誤認していることを知っている。けれど、Aちゃんはあえて騙されようと言うのだ。しかも、面白いことに、自身がその知識を持っていることを自慢してる！ もう！ でもそう言う回りくどいところ嫌いじゃないよ。なんだかAちゃんぽいね。
でも、意味をすぐに汲み取って返事ができる伊沢さんとふくらさんもすごい。僕は、ずっと考えてようやく会話に戻ってこれそうだ。
「山本くん、クリスマスのご予定は？」
なんて返事するかわかりきってるくせにAちゃんは聞いた。その顔は緩みまくった頬にピンクのチークが押されてるみたい。かわいいなあ。僕はAちゃんの頬をつまんで伸ばした。
「Aちゃんと過ごす予定が入ってる」
「違くて！ クリスマスイブの日！」
「ないかな」
「お前ら25日に過ごすの？ 夜？
それクリスマス終わってない？ ねえね」
「伊沢さんうるさい！ わたしたちは誤認して過ごすの！ ねー？」
「なるほど……山本もやるじゃん。本場の24日じゃなくて25日ですか？」
「ふくらさん。でもね、『24日はみんなで過ごすだろうから25日はわたしと過ごす予定にしてね』って言ったのはAちゃんです」
「こら！！ 山本祥彰！！」
勢いで胸の内に飛び込んでくるAちゃんを受け止めて、頭を撫でる。こんなところでいちゃつくなよと悪態をつく伊沢さんの声も聞こえた。
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