河村と水瀬 ページ14
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Aちゃんと河村さん。
2人はQK内で、所謂プロデューサー側に携わっている。つまり、そもそもの企画を考案したり、表に出る方々に出すクイズを試行錯誤して抽出している。細かい作業を行う裏方にあるのだ。(同様のふくらさんも、河村さんが裏のときは表、表なら裏とP側も工夫はしているので、必ずしも裏というわけではない。水瀬は裏にいる可能性の方が高いため、ここでは例にあげない。)
結果的にいうと、2人は相性が合わないらしい。でも、それは仲の良し悪しでなく、あくまでタイプ的な相性で、簡単に言っちゃえば話が合わないのである。だから、対立することも然程珍しくはないので、よっぽどのことがない限り僕も伊沢さんも他のメンバーも口を挟まない。
例えば、たけのこときのこ(の、某お菓子の方である)はどっちが美味しいだとか、朝食はパンかご飯かだとか、好きなものは先に食べるか後に食べるかだとか……深くまで掘り下げると、倫理的なところや政治的なところでも討論を繰り返せる、正に、いたらいいなと思えるような存在。最近は「そうだね」と受け入れてしまう人もきっと多いから。
こういう人がいると河村さんもAちゃんも「気が楽」と言っていた。相性は悪いけれど、でも、悪くはないと聞くのは自分のことでないのに気分がいい。
「河村さん、ボタン取って」
「あい」
「ありがとー」
「今日Aちゃんいるなんて聞いてないよ」
「山本くんは知ってたよ！」
「あなたの彼氏ですからねー
はいはいー、山本なんとかして」
「僕は2人の会話を聞いていたいな〜」
「僕らのに需要があんの？」
「だったら山本くんと河村さんの会話を聞いてた方がよっぽど需要ある」
「違うでしょ。ほんとに君たち付き合ってる？」
河村さんが鋭い目つきでそう問いかける。
Aちゃんは「うん」と軽く返事をし、河村さんは「ふーん」とまるで興味なさげに流し、終わったとされた会話はAちゃんが繋いだ。
「え、ボタンこっちの方が良くない？」
「見栄え的にもこうでしょ」
「だって、こう映るよー？
多分ここにテロップくるもん」
「僕がテロップここに置くから」
「そうなの？ じゃあいいや」
……まあ、こんな感じにすんなり終わることもしばしば。と、ここで伊沢さんとふくらさんが買い出しから戻ってくる。さあ、今日は僕も撮影だ。裏にいるAちゃんと河村さんのまた始まった謎の攻防を見届けながら、僕はスイッチを切り替えるのだった。
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