ハロウィーン ページ11
.遅れですが書いたのは当日
「トリック・オワ・トリート！」
「Aさんほんと、英語の発音ひどいな〜」
「言わない約束だよ。いたずらしますよ」
今日はハロウィーンの日。
QKの皆さんは、まあ、学生なので普段は集まらない。なぜか集まっているのは僕、山本と、Aちゃんと、母的存在ふくらさんと、本とにらめっこしている川上さんと、お菓子を口に詰め込まれたこうちゃんだ。オフィスによくいるのはふくらさんだから不思議ではなかったが、川上さんとこうちゃんがいることに首を傾げてしまった。まあ、言うからには、こうだ。
「俺は財布。Aちゃんの」
「僕は水上がAさんにお菓子買ってあげてって」
「俺が口に詰め込まれたお菓子、大抵Aちゃんが買ってって強請ったものだからね？ 山本さん、彼氏だから責任とってよね。夜ご飯食べれなくなっちゃうじゃん」
「いや、あいつもくればいいのにな。俺をパシリにせず」
……とのこと、曰く、AちゃんがQKのメッセージグループに来いと呼んだそうだ。僕もいま確認して見るとそんな通知が入っていた。僕は電話がかかってきたので出ただけ。まさか、大学生にもなってハロウィーンパーティしようと思ってなかった。というか、今日はハロウィーンだったのかと忘れてしまうほど最近は忙しかった。
呼びつけられた第1号の川上さんは迷惑な話笑っていたが、でも、ものすごく楽しそうだし、Aちゃんの破天荒な姿を見て写真を撮っている。おそらく、水上さんに送っているものだ。いや、水上さんはなんでAちゃんに餌付けしようとしているの。えー、混乱してきた。
あと、話の通りここにあるお菓子はこうちゃんとAちゃんが一緒に買ってきたものだ。
財布って言われているけれどAちゃんもそんな無慈悲なことはしない。こうちゃんも僕と同じらしく、「ハロウィーンなんて忘れてた」と言っていた。最近はちょっぴり忙しくさみしい秋を過ごしている。
でも気になるのはAちゃんの頭についているカチューシャ。骨組みだけの猫耳が付いているのだが、コスプレしているわけでもないし、いや、Aちゃん何してるの。何川上さんにいたずらしようとしてるのー！！ と、僕が来たのにようやく気付いた様子のAちゃんがバッとこちらを振り返ると、きらきらさせた瞳を見せながらこちらへ駆け寄る。
「山本くん！ こんにちは！」
「やっほー。Aちゃん、それはなに」
「トリック・オワ・トリート！」
「……もう」
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