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「帰ってからもちゃんと冷やせよ」
「うん」
「明日、治ってなかったら怒るからな」
「さすがにそれは無理だよ」
羽生さんの指の関節が、私の腫れた頬に優しく触れた。冷たかっただろうに、長い時間羽生さんの手によって冷やされたそこは、放置して場合と比べれば随分マシな状態のはずだ。
誘拐にあったことは実家にきちんと報告をしないといけない。ひょっとしたら親の業務に関わる事案かもしらないからだ。そのために私は、羽生さんに見送られて迎えの車に乗り込んだ。スモークが貼られた窓ガラスのおかげで、乗ってしまえば羽生さんと目が合わなくなる。でも、車が見えなくなるまで羽生さんは私のことを見届けてくれていた。
その姿が見えなくなってから前へと向くと、バックミラー越しに鞘野がこちらを見ていた。
「…何かありましたか？お顔が…」
「うん……うん。でもいつものこと。また助けて貰っちゃった」
「今の方に？それは御礼をしないといけませんね。A様にお伝えしないと…」
「っ、だめ！」
鞘野の言葉に、思わず私は身を乗り出す。
「その人のことは、お父さんには絶対に言わないで」
「……かしこまりました」
もちろん、鞘野に悪気があるわけじゃない。
鞘野には長年私の運転手を務めてもらっている。名前は知らなくとも羽生さんのことは外事にいた頃から把握しているし、一樹さんと会うことに対して気乗りしていないことも知っているし、家に帰りたくない私が一人暮らししている場所も知っているけれど、そのことについて父親に話したりはしていないようだった。
おかげで、私はこうして自由な時間を自由に使うことが出来ている。
「…いつもごめんね。わがままばっかり言って」
真面目なその人には、私がアバランチに関わっていることは絶対に言わないようにしていた。
すでに十分見て見ぬふりをしてもらっている。これ以上迷惑をかけるわけにはいかなかった。
家の敷地内へと入っていくと、見慣れない車が1台止まっていた。父への来客なんだろうか。
ばったり会うことがあるかもしれないことを考えて、私は『A家の娘』としての顔を作る。
鞘野に促されて車から降りる。玄関に入ろうとドアノブに手を伸ばすと、私が開けるよりも先にその扉が開いた。
「…A」
「っ、お父さん。ただいま戻りました」
「おやおや、ご息女ですか。噂をすればなんとやら、ってやつですね」
「っ……！」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべたのは、大山だ。
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ハニ(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年8月30日 17時) (
レス) id: e49c92eedc (このIDを非表示/違反報告)
kotono3026(プロフ) - 面白くて続きがすごく読みたいです！ (2022年7月11日 7時) (レス) @page18 id: 7aa8e8b85c (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 続きを楽しみにしています！！ (2022年5月3日 6時) (レス) @page18 id: 3993a699bc (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2022年4月30日 19時) (レス) @page18 id: c5820b78bf (このIDを非表示/違反報告)
まい - こんばんは。ちょくちょくこの小説を読みに来ているのですが更新がされていないようで寂しいです…。続きはあると思ってもよろしいでしょうか？ (2022年2月15日 5時) (レス) @page18 id: 8f49d2e699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年11月25日 19時
