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「いや考え過ぎじゃないですか?もう飲みたいもん飲めばいいじゃないですか」
「お前は直感だけだから的外すんだよ」
「ははっ、出たー。もうまた説教っすかね」
「羽生さん結構酔ってるね?」
「A。んなことねーよ」
とはいえいつもより口調が緩くて甘い。それだけ気が置ける場所なんだろうけれど。山守さんから貰ったお水をそのまま羽生さんの近くに置くと、目が合った山守さんには微笑ましいものを見るかのような表情を浮かべていた。
「…けど、お前はそれでいい」
「えっ?」
「正義ってのは直感的なもんだろ。考えると打算とか計算とかが混じる。だからお前は直感に従って誰よりも先を走れ。正義の力を信じて」
「…それで的外してもいいんすか?」
「実際、Aさんのことはそうやって助けたろ」
「……えっ」
そこで突然私の話が引き合いになると思わなくて、思わず私は驚きを声に出していた。
「こいつがAさんを助けた時も、Aさんのためにって、中に何人いるかもよくわかってないのに飛び込んだんだよ。ま、褒められるような行動じゃないけどな。そのせいでこいつも俺もすげー怒られたし」
「ちょっと藤田さん。Aの前でそういうこと言わないでくださいよ」
「お前のせいで怒られたんだからいいだろ。あんときの仕返しだ」
「そう、だったんだ…」
私にはそんなこと全く教えてくれなかった。あれからもうだいぶ経つのに初めて知った事実に驚いて羽生さんのことを見ると、居心地悪そうに視線を逸らされる。
「…まあ、もし的が外れたとしても、そんときは俺がフォローする。お前の後ろには必ず俺がいる。それを忘れんな」
「……はい」
眩しいぐらいの藤田さんの笑みに、私も自然と顔が綻ぶ。
羽生さんの周りには素敵な人たちがたくさんいる。それは喜ばしいことだ。
「いい人だね」
「ん?」
「藤田さんも、山守さんも」
帰り道、羽生さんと2人並んで歩く。近くの駅に迎えの車を呼んでいて、羽生さんがそこまで送り届けてくれている途中だ。
「2人には、幸せになってほしいな」
「なんでそんな他人事なんだよ」
「…だって」
「Aも、幸せになってほしいけどな。俺は」
そんなこと出来るわけがない。呟くような羽生さんの声は聞こえないふりをする。
見上げた先には丸い月が浮かんでいた。藤田さんと山守さんの未来が、私とは違って幸せなものであるようにと心から願った。
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みずたま(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!どう転ぶかはわからないですが、私もくっついたらいいなーとは思ってます。引き続きよろしくお願いします! (2021年11月25日 8時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆 - みずたまさん» 初コメ失礼します!とても、良い話で…一気読みしてしまいましたww 立場的に無理なんだろうと思いながらも、ヒロインと羽生さんがふっついて欲しいと願う程のお話で!毎回、楽しませて貰ってます!ww (2021年11月24日 22時) (レス) @page46 id: 0323b34345 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - さっくんさん» ありがとうございます!続き更新しましたー!よろしくお願いします! (2021年11月24日 21時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
さっくん - やー!♡続き気になるぅー!!!!!!!!!! (2021年11月23日 22時) (レス) id: 7aaa679c24 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - カンさん» はじめまして!ご指摘ありがとうございます。マルヒとマルガイ、完全に逆にして覚えてました…!修正しておきます。ありがとうございます! (2021年11月20日 23時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みずたま | 作成日時:2021年10月27日 1時