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あれから羽生さんとは、たまに会うようになっていた。そういうことをするために会っているのだけれど、その前に一緒にご飯を食べに行ったり、どこかへ出かけてみたり。
割り切った関係だなんてことはなく、一緒にいる時はまるで恋人のように過ごすようにまでなっていた。少なくとも、羽生さんの誕生日を当日に祝わせて貰える程度には。
羽生さんと待ち合わせる時に使っている、ホテルのラウンジでお茶を飲んでいると、着信がかかってきた。
「羽生さん?どうしたの?」
『A?悪い。あのさ、今日って店予約してくれたって言ってたよな?』
「うん。でもキャンセル出来るし大丈夫だよ。仕事?」
『いや、それが……』
羽生さんが言葉を探すように口籠る。こんな風になる羽生さんは珍しい。
彼は突然仕事になることも多い人だから融通のきく店にしておいた。だからキャンセルすること自体は問題ないのに。
「どうしたの?」
『…先輩が、家で祝ってやるって言ってくれてて』
「あ、そういうこと!いいじゃん、行っておいでよ」
もう夜だというのに、突然入ってきた仕事じゃないのならよかった。しかも羽生さんの誕生日を祝ってあげようとしてくれる人がいるのは、とてもいいことだ。
今日会えなくなってしまったことはほんの少し残念だけれど、それはまあ、仕方がない。
『じゃなくて、Aも一緒にどうかって言われてんだよな』
「……えっ、なんで?」
『彼女さんも一緒に、って』
「………私、彼女じゃないよね?」
『…悪い。否定するのが面倒になってるうちに先輩の中ではそうなってた。無理なら無理で大丈夫。上手く言っておくし』
でも、そうすることで羽生さんの先輩からの評価が下がったりしたりはしないんだろうか。警察なんてすごく縦社会そうだし、羽生さんは世渡り上手そうではあるけれど、先輩からのお誘いを断るのはあまり良くない気がする。
「…わかった。いいよ、行く」
『Aありがとう、恩に着るわ』
「私はちゃんと彼女ぶるから、ちゃんと彼氏ぶってね、羽生さん」
『オッケーオッケー。じゃあ迎えに行く。いつもんとこだろ?』
「うん、待ってるねー」
私は電話を切った。
私と羽生さんの関係は2人だけのものにしていたから、第三者に見せるのは初めてのことだ。彼女だなんて嘘ついていいのかは疑問だけれど、いざとなれば別れたことにすればいい。
とりあえず、手土産を手に入れるために私は残ったお茶を飲み切ると立ち上がった。
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みずたま(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!どう転ぶかはわからないですが、私もくっついたらいいなーとは思ってます。引き続きよろしくお願いします! (2021年11月25日 8時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆 - みずたまさん» 初コメ失礼します!とても、良い話で…一気読みしてしまいましたww 立場的に無理なんだろうと思いながらも、ヒロインと羽生さんがふっついて欲しいと願う程のお話で!毎回、楽しませて貰ってます!ww (2021年11月24日 22時) (レス) @page46 id: 0323b34345 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - さっくんさん» ありがとうございます!続き更新しましたー!よろしくお願いします! (2021年11月24日 21時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
さっくん - やー!♡続き気になるぅー!!!!!!!!!! (2021年11月23日 22時) (レス) id: 7aaa679c24 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - カンさん» はじめまして!ご指摘ありがとうございます。マルヒとマルガイ、完全に逆にして覚えてました…!修正しておきます。ありがとうございます! (2021年11月20日 23時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みずたま | 作成日時:2021年10月27日 1時