side: T.Makihara ページ32
俺にとってのAは、それこそどこにでもいるような、普通の女の子だ。
有名な財閥のお嬢様だと言っていたけれど、『お嬢様らしさ』は全くなかった。
ハイブランドのものを身につけてなかったし、俺たちと金銭感覚もそれほどずれていないし、世間知らずというわけでもない。
1人で外に出る時は必ず迎えを呼んでいたり、なんの躊躇いもなくぽんと大金を出せてしまうようなところを見て、ああそういえばAはお嬢様だったと思い出すぐらいだ。
そのAの『普通さ』をより感じ取れるのが、羽生ちゃんと一緒にいるところを見ている時。
羽生ちゃんと笑い合っているAの顔は、本当にかわいい。
俺に見せるような表情ではないから、本当に羽生ちゃんのことが好きなんだということがわかってしまう。
それもそうだ。あの2人はここに来る前からそういう関係らしいのだから。
「A？どしたの？」
リナから送られてくる映像を見ていると、唐突にAの様子がおかしくなった。
口元に手をやって、立ち尽くしているその顔色はひどく悪い。怖がっていて、怯えるような目つきになっているのに、Aは映像から目が離せられないようだった。
吐き出し始めるまでは時間がかかった。なんとか我慢しようとしていたのかもしれない。
「山守さん、これ使って」
「いいの？」
「うん」
タオルを引っ張り出して、山守さんに手渡す。
俺はまだパソコンの前から離れられない。その場所から、Aのことを伺うしかなかった。
いつも朗らかなAが、こんな風になっているところを見るのは初めてだ。
何があったのかはわからないけれど、AにはAの事情がある。俺がそうだったように。
リナがホテルに移動をしている隙に、疲れてぐったりとした様子のAをソファーへ移動させるのを手伝った。触れた身体は、細くて軽くて柔らかい。
「……マッキー、タオル…」
「いいよ。役に立って良かった。それはそうと、Aのこと、羽生ちゃんに連絡しといてもいい？早く戻れーって」
「早くじゃなくても、大丈夫」
Aはそう言って力なく笑った。早くなくてもいいけど、戻ってきて欲しい。山守さんや、西城くんや、俺が一緒にいるのに、俺たちじゃ役不足だってこと。
俺はAが見ていないところで、携帯を握りしめる。
どれだけAのことを見ていても、Aの視線の先には羽生ちゃんしかいない。
俺の方が先に出会っていれば、何か変わっていたんだろうか。
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みずたま(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます！どう転ぶかはわからないですが、私もくっついたらいいなーとは思ってます。引き続きよろしくお願いします！ (2021年11月25日 8時) (
レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆 - みずたまさん» 初コメ失礼します！とても、良い話で…一気読みしてしまいましたww 立場的に無理なんだろうと思いながらも、ヒロインと羽生さんがふっついて欲しいと願う程のお話で！毎回、楽しませて貰ってます！ww (2021年11月24日 22時) (レス) @page46 id: 0323b34345 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - さっくんさん» ありがとうございます！続き更新しましたー！よろしくお願いします！ (2021年11月24日 21時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
さっくん - やー！♡続き気になるぅー!!!!!!!!!! (2021年11月23日 22時) (レス) id: 7aaa679c24 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - カンさん» はじめまして！ご指摘ありがとうございます。マルヒとマルガイ、完全に逆にして覚えてました…！修正しておきます。ありがとうございます！ (2021年11月20日 23時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年10月27日 1時
