検索窓
今日:13 hit、昨日:53 hit、合計:190,611 hit

3-3 ページ24

西城くんも驚いていたけれど、思ったよりも大きな存在に向かっていたことを知って、私は口元に手を当てる。
だからと言って、反対する必要もないのだけれど。


「今回は悠源館の実態を暴き、Kファイルを手に入れて欲しい」
「いいけどさー、もっと中の様子とかわかる情報ないの?」


マッキーがそう思うのも無理ない。でもセキュリティーも厳しく、監視カメラは1台もなく、従業員や会員は口を割らない。となるとなかなか難しそうだった。


「……じゃあ、私の方で何か出来ないか探ってみましょうか」


唐突にそんなことを言い出した私のことを、部屋にいたみんなが一瞬で見てきた。コーヒーを飲んでいた羽生さんが、眉根を寄せて私の名前を呼ぶ。無理するな、とでも言っているようだった。


「A」
「聞いたことあるってことは、父も顔を出したことがあるかもしれないし、一緒にくっついていくことも出来るかも…」
「A、気持ちは嬉しいんだけど、あなたは中には入れない」
「そうなんですか?」


山守さんがそう言い切ったのにはわけがあった。この数年の間、悠源館と関わりのある女性が何人も亡くなっていた。彼女らは黄月が所有している芸能事務所のタレントで、悠源館で働くホステスでもある。
悠源館を出た客は彼女たちと連れ立ってホテルに向かう。そこで何が行われるのかなんて、聞かなくたってわかった。
まだ記憶に新しい、嫌な思い出が蘇る。震える手を誤魔化すように、私はぎゅっと手を握った。


「……確かに、私が客になるのは難しそうですね」
「そういうこと。大山サイドも私たちの動きに気付き始めてると思う。気をつけて行動して」


山守さんは来たばかりだというのにまた鞄を持って出る支度をした。忙しい人だ。
山守さんが出ていく直前、私のすぐ隣で立ち止まると、私の肩に優しく触れた。握り締められていた手のことを、見ていたのかもしれない。


「…リナ。よろしくね」
「………はい」


声をかけられたのはリナだった。含みのあるその言い方に、何かがあることはきっとここにいる全員が気づいたと思う。それでもみんなが私の事情に踏み込まないように、リナの事情にもこちらからは踏み込まない。
さっきリナが私のことを妙に気にかけていたのは、それと繋がっているのかななんて、ぼんやりと思った。

3-4→←3-2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (250 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
543人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みずたま(プロフ) - 竜胆さん» コメントありがとうございます!どう転ぶかはわからないですが、私もくっついたらいいなーとは思ってます。引き続きよろしくお願いします! (2021年11月25日 8時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆 - みずたまさん» 初コメ失礼します!とても、良い話で…一気読みしてしまいましたww 立場的に無理なんだろうと思いながらも、ヒロインと羽生さんがふっついて欲しいと願う程のお話で!毎回、楽しませて貰ってます!ww (2021年11月24日 22時) (レス) @page46 id: 0323b34345 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - さっくんさん» ありがとうございます!続き更新しましたー!よろしくお願いします! (2021年11月24日 21時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
さっくん - やー!♡続き気になるぅー!!!!!!!!!! (2021年11月23日 22時) (レス) id: 7aaa679c24 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - カンさん» はじめまして!ご指摘ありがとうございます。マルヒとマルガイ、完全に逆にして覚えてました…!修正しておきます。ありがとうございます! (2021年11月20日 23時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みずたま | 作成日時:2021年10月27日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。