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気づけば淳太はカウンターにうつ伏せて、寝始めてもうてた。潰れるの見るのなんて、初めてや。淳太も酔うんやな、と当たり前のことを改めて思う。


まぁ、弱い部分を見せてもらえるようになることは、少し、嬉しかったりもするんやけど。



「なぁ、これなに?」

淳太の前に残された琥珀色の液体をさして聞いたら、小柄なバーテンさんは怪訝な顔してグラスを見た。

「あーっと…マッカランすね」

「ごめん俺酒わからんねんけどさ、これ強いん?」

「まぁ、それなりに、ってかんじやと思いますけど」

お水入れましょか、という彼に甘えて、ミネラルウォーターを2杯注いでもらう。洒落た店のわりにバーテンさんの格好はラフで、金色に染められた髪の毛によう似合うとる。

「こいついつもこんな酔うてる?俺の前じゃ飲まんだけなんかなぁ」

くるときに行きつけやって言うてたから、バーテンさんとも知り合いなんかなと思って聞いてみたんやけど、バーテンさんはどういうわけか苦笑い。

「あれ、行きつけやいうてたから…」

って言い訳みたいに呟いたら

「あぁ、ちゃいますちゃいます!俺が臨時なんです」

言うて小動物みたいな動きで笑った。かわいい人やな、と思う。
淳太寝てもうたし、そろそろ帰ったほうがええかな。けどなんか、もう少し潰れた淳太を見時たいような気もするな。

「いつもは酔わへん人なんですか?」

なんてことを考えてたら、バーテンさんが懐っこい顔して俺を見ていた。

「ん?んー、少なくとも俺は潰れるまで酔うてんのはみたことないわ。酒強いんすよ」

「へぇ、じゃあ珍しいんや」

「なぁ、俺は飲まんからわからへんねんけど、なんか悩み事とかあると酔いやすくなったりするもんなん?」

「ふふっ…それは俺もわからんわぁ」

あ、口調砕けた。
服装のせいか、身長のせいか、なんか話しやすいとこがある人やな。若いからかもしれん。髪色が少し大人に見せとるだけで、高校生言われても信じてまいそうな可愛い顔。

「お兄さんなんか悩んどるんですか?」

出し抜けにそういったバーテンさんが、いたずらする子どもみたいな目ェで俺を見る。

「あんなぁ、恋煩いやねん」

それがなんかかわいくて、俺は、なんでかぽろっとほんまのことを言うてもうてた。
ごめんな淳太。でもこの後タクシー乗せて家まで送ったるんや。こんくらい、ええやろ?

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作者名:ぐりむ | 作成日時:2017年5月14日 9時

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