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「失敗したら〜とか、うざがられたら〜とか、起こってからのことは考えへんねん。事実完全にあかんかったらまぁ最悪ここ来なくなればええ話やろ?言うてたで」
「え、は、やーっっば」
「やんなぁ笑」
これは多分賄いやのに、照史はマメにご飯を型抜きに盛り始めた。俺が食うんやからそのまんまでもええのに。でもそれが照史くんのプロとしてのこだわりなんやってことも、もうそろそろ気づいてる。
黄色い器に盛り付けられた、まるいお山形の白米。綺麗に色を残したまま素揚げされた野菜がその上に並べられてく。照史くんは、優しい人や。
「なぁ、やったら俺は何志向?」
料理に集中してるときは返事せぇへんの、知ってる上で聞いてみた。
「んー…」
案の定、返事は返って来ん。
薄切りの牛肉に無骨なにんじんとじゃがいも。玉ねぎがちょっと溶けとって。照史のつくるカレーは家で食うとったやつとおんなし。かき混ぜられたそれが、ぐるっと皿に回しかけられて、カウンターに座る俺の前に置かれたとこで、なんとなく面接のときのことを思い出した。黒くて逞しい料理人の手。
「ちなみに流星は未来志向な」
「それなんも考えてへんってことやろ?笑」
「でも楽しいことみつけんの得意ってことやで」
食え食えって照史くんがスプーンくれるから、冷めへんうちにいただきますして。んまい!って口に出したら照史くんはよかったわって笑って、そんままバックヤードの方に入っていく。裏口から外に出る扉の音が聞こえたからタバコ吸いに行ったんかもしれん。
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作者名:ぐりむ | 作成日時:2017年5月14日 9時