契約済み。3

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それからは、どうやって帰ってきたのかあまり記憶がない。



でも、普段から切符の買い方も電車のホームの位置も体が覚えていたので、無事自宅まで辿り着くことができた。



部屋の鍵を開けて真っ暗な玄関を抜けると、部屋の電気をつけることも忘れて、ベッドに倒れこむ。



しばらくはうつぶせのまま固まっていたが、呼吸が苦しくなってきたのでゆっくりと寝返りを打った。



チクタクと、規則正しく時刻を刻む秒針の音が静かに響いている。



…今、何時だろ…。



窓の方に目をやれば、もう外はすっかり真っ暗だった。



あーあ、今市さんと夕陽をながめていた時は楽しかったのになあ。



広臣に手を引かれてラブホについたときはもう既に、茜色の空は厚い闇に包まれかけていた。



昔から、夕暮れ時の空を見ると、“お遊びはおしまい”という感じがして、少しだけ寂しかったのを覚えている。



広臣といるときは、いつも真っ暗な空だなあ。


夜しか会えないんだから、当たり前か。



…ってこれ、今市さんと車内にいた時も似たようなこと考えてたよね。



なぜだろう、今とてつもない虚無感がこみ上げている。



激しく広臣を求めるわけでもない、怒りがこみ上げるわけでもない。



自分の行いに後悔がこみ上げるわけでもない、誰かに慰めてもらいたいわけでもない。



ただただ、自分の体の一部がすり減ってしまったような、そんな感じ。




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