契約済み。

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PM6:32



情けなく背中を若干丸めながら帰路につく。



今日の新曲打ち合わせで、新曲のデモテープと歌詞を書いたプリントを差し出したあたしに、プロデューサーが突きつけた言葉が、



さっきから何度もあたしの頭をこだましている。



“ 本当にこの曲が、今度こそヒットしてみせるっていう決意の表れなのか？…はっ。笑わせるな。”




“ お前が曲を持ってくるその姿勢も、曲の調子も、売れてない今までと何ら変わってないこと、いい加減気づけ！ ”



事務所を出た頃からずっと手元に持ったままだった、歌詞の印刷されたプリントに目をやる。



特にそれと確信できる言葉を投げられたわけでもないが、きっとこれは、もう一度曲の案を練り直してこいという意味だと思う。



…お兄ちゃんも、プロデューサーも。



どいうもこいつも何よ、覚悟とか、決意とか。



今日突きつけられたプロデューサーの言葉に、もはや悔しささえ浮かんでこない。


…これも、みんなのいう、あたしの覚悟が欠けてるってことなの？



まだがむしゃらに、なりきれてないってことなの？



そんなの、無茶よ…。



少しでも期待できるような一縷のチャンスさえ巡ってこないのに、必死にすがりつける希望さえないのに、



がむしゃらになんて、無茶だよ…。



目の奥に熱いものを感じる。



やがて溢れた涙は、一滴、二滴と、静かに散ってはコンクリートの上に黒いしみを作った。



シンガーという夢を持って4年、



初めて真剣に、無難に就職目指そうかなんて考えがよぎる。


でも、今さらそんな都合よくもらえる就職なんてないか…と、自嘲気味に笑った。



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♪チャンチャンチャン、チャンチャンチャチャチャチャン〜



初期設定のままの、間抜けな着信音が鞄の中で響いた。



「…？」


見たことのない番号を不審に思いながらも、乱暴に涙を拭って、


スマホを耳に当てた。



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