契約済み。

○*。43 ページ46

.



_________自分でも、ばかげてると思う。

.



.






あの日、健二郎くんの手違いで偶然同じ部屋に居合わせた俺ら。



メンバーの兄妹ってだけで、本当に初対面だった。


ドアを開けるなり現れた俺に目を丸くした彼女は、慌てて放ったセリフを見事に噛んだ。


顔を真っ赤にしたかと思いきや、彼女の失態を笑った俺を今度は睨みつけてきやがる。



単純に、


“おもしれぇ。”


って、思っただけ。



それ以上の気持ちなんて、なかった。



からかい程度に提案しただけなのに、本気で怒って俺を殴ったAちゃんに、怒りが湧いてくるどころか、



もっと近づきたくなった。



それで、自分から返事の催促の電話をよこしたんだ。




臣「自分で言った冗談を、自分で本気にするなんて、本当ばかげてるって思うよ、まじで。」



飲み干したグラスを、テーブルに置いた。



宴会だろうか、中年男性が乾杯の音頭をとる声をふすまの向こうに聞きながら、こちらはしんみりとしたムードに包まれていた。



目の前には、なんとも言えない顔で俺を見つめる隆二。



隆「…それでその子、乗ったの？」



臣「…ああ、乗った。俺が自分から返事聞きに行ったのなんか、自分からもっと嫌われに行くようなもんなのに…あいつ、乗ったんだよ。」



少し上体を反らして、足を組み直した。


.

○*。44→←○*。42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す