話したい。 ページ9
「あの、悟さん。…お願いが、一つ…」
「…なんだよ」
「わ、わたしを、呪術高専へ連れていっては頂けないでしょうか…」
いきなりすぎただろうかと、だんだん声が尻すぼみになってしまった。
しかも堅苦しい敬語。
しばらく待っても返事がこないので、そろそろと顔を上げる。
「やっぱり、だめでしょうか…」
「……別に、いーけど。」
「ありがとうございます!」
嬉しさで頬が緩んだ。
「土曜日。土曜日の11時。迎えにくる。」
「分かりました」
ぶっきらぼうに告げられた日にちと時間。
土曜日と日曜日は普段、友達と遊びに行くわけでもなく、家にいて家事や課題なんかをしていたから、特に問題はなかった。
そして悟さんはすたすたと自分の部屋へ戻っていってしまった。
もう少し、話せると思ったのに。
久しぶりに話したから、もう少し会話できると思った。
あわよくば、一緒にお茶でも、なんて思っていた。
そううまくはいかないものね。
愛されるなんて、図々しいことは望まない。
望んではいけない。
だけど、少し、ほんの少しでいいから、悟さんと話がしたかった。
ふっと自嘲気味の笑いが顔に浮かんだ。
そうして迎えた土曜日。
私はマンションのエントランスで悟さんを待っていた。
ふわりと広がるスカートに、ヒールが低めのパンプス。
下の方でまとめたシニヨン。
張り切りすぎちゃったかしら、と息を吐く。
だって、久しぶりなんだもの。ちょっとくらいおしゃれして、かわいいと思われたいじゃない。
5分ほど待っていると、約束の時間ぴったりに悟さんは現れた。
目の前にたった悟さんはじっと私を見つめてくる。
「悟さん?」
じっとこちらを見ていた悟さんは、はっとして車の方へ背を向けてしまった。
「なんでもない。…車で行くから。」
「はい。」
黒い車の後ろに乗り込む。
運転席には、スーツを着た男性が座っていた。
「こんにちは、初めまして。」
「ああ、こんにちは。えっと、五条さんの婚約者の…?」
「はい。Aと申します。」
「あっ、補助監督の佐藤です。」
にっこりと笑う感じの良さそうな人だった。
悟さんが反対側から後ろの席へ乗り込むと、車はすぅっと走り出した。
40分も乗っていれば、車は大きな建物の前に止まった。
「ここが、呪術高専…」
悟さんが通っている学校。
住んでいる場所。
東京の郊外にあるということは初めて知った。
「こっち」
悟さんがずんずん前へ進んでいく。
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桜 - まさか…… (2022年8月1日 23時) (レス) @page33 id: eaa9446555 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 甘味!さん» 甘味!さん、いつもコメントありがとうございます。実はですね、あの人夏油さんじゃないんですよ…一個下の黒髪のあの人です。ななみんと同期の…更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2021年7月8日 19時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - プスメラウィッチさん» ごじょるオチです。ごじょるにしかおちません。 (2021年7月8日 1時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
甘味! - はい!夏油さんだと思いたいですっ(更新楽しみにしてます! (2021年7月7日 20時) (レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年7月1日 4時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2021年6月20日 0時