花。 ページ7
父と母が亡くなって一年が過ぎた。
まだまだ心の傷は癒えないものの、母から最期に言われたよう、生き抜く努力はしているつもり。
父と母のお葬式も終わり、しばらく休んでいた学校にも行きはじめ、最近はやっと落ち着き始めた。
悟さんとの婚約は、結局解消されなかった。
てっきり、解消されるものだと思っていたけれど。
今日も、悟さんがいない、1人では広すぎるマンションの一室へ帰る。
少し前から再び、悟さんと私のために用意されたマンションで暮らし始めた。
超高層マンションで、セキュリティも十分すぎるほど。
ガラス張りのエントランスを通り、大きなエレベーターで最上階へのぼる。
がちゃりと鍵を開けて入れば、いやに広い部屋でひとりぼっちだという感覚がさらに強くなる。
悟さんは、ここには殆ど帰ってこない。
呪術高等専門学校の寮で生活しているようだし、私にも会いたくないのだろうと思う。
わざわざここにくる理由がない。
でも、広い部屋に1人は寂しい。
ふぅ、とため息をついたとき、がたん、と何かが倒れる音が玄関の外から聞こえた。
インターホンのモニターで外を見ると、ほっそりしている男性が写った。
何してるの?
そうっとドアを開ける。
「うわぁっ?!」
「どなたです?ここでなにをされてるんですか。」
「え、えっと、これは、その。」
植木鉢が倒れている。
あの音は、植木鉢が倒れた音だったのね。
「これはー、そのー」
あたふたしている男性の手には、一輪の白いポインセチア。
なぜ、この男性が花を持って…
はっと息を呑む。
実は、半年ほど前から、毎日マンションの部屋の前に一輪の花がぽつんと置かれるようになった。
すみれのときもあったし、かすみ草のときも、真っ赤な薔薇のときもあった。
だけど、誰が置いてくれているかは全く分からない。
最初は怪しく思ったものの、その花はいつのまにか、両親が亡くなった私の傷を癒してくれる大切なものになっていた。
誰が置いていってくれているのか、今まで全く分からなかったため、お礼をしたくてもできなかった。
この男性だったんだわ。
ぴしりと固まってしまった男性に駆け寄る。
「あの、毎日ありがとうございます。本当に、ありがとう…」
「いえ、これは…」
「父か母のお知り合いの方なのでしょう?」
「いえ、そうではなく、僕は頼まれただけで…」
「頼まれた?どなたにですか?」
「そ、それは、秘密でして…その、あ、…す、すみません!!」
「えっ?!」
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桜 - まさか…… (2022年8月1日 23時) (レス) @page33 id: eaa9446555 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 甘味!さん» 甘味!さん、いつもコメントありがとうございます。実はですね、あの人夏油さんじゃないんですよ…一個下の黒髪のあの人です。ななみんと同期の…更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2021年7月8日 19時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - プスメラウィッチさん» ごじょるオチです。ごじょるにしかおちません。 (2021年7月8日 1時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
甘味! - はい!夏油さんだと思いたいですっ(更新楽しみにしてます! (2021年7月7日 20時) (レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年7月1日 4時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2021年6月20日 0時