そんな。 ページ4
幼い頃から、父と母が大好きだった。
父はぼんやりと呪霊が見えるだけの一般人。
母は花咲家という家の直系の人で、花咲家には代々、直系の女性のみが受け継ぐ術式がある。その術式を、私は母から受け継いだ。
私の両手をきゅっと繋いで、私の方を見て、優しい笑顔で微笑んでくれた父と母。
料理上手で、しっかり者で、怒る時は怒って、褒めてくれる時はたくさん褒めてくれた、私の理想の女性だった母。
私にはべったり甘くて、少しねだってみれば、ママに内緒だぞ、と言ってこっそり買ってくれた父。
たけど、その後母にばれて、一緒に怒られたこともあった。
父も母も、私に物事を強制するようなことは一切しなかった。
自分がどうしたいかを自分で考えなさい、と母によく言われたことを覚えている。
私は、そんな母と父が大好きで。優しくて、私に有り余るほどの愛情をくれた父と母が、大好きだった。
それなのに。
「…いま、なんて…」
「…A様…」
「父と、母が、なんですって?」
「…」
押し黙る女中の反応に、彼女が持ってきた知らせが現実味を帯びる。
お父さんと、お母さんが、殺された?
いえ、そんなはず、ない。私をおいて、そんな、そんなことは。
「…そ、…そう……ひとりに、して。」
震える声で、失礼いたしますと、私と悟さん専用のマンションの部屋のドアを閉じて、女中さんが帰っていく。
「そんな、はず、ない。お父さん、お母さん、違うよね。」
玄関から、ふらふらとリビングに戻る。
ソファにばたりと座り込むと、途端に彼女の前では耐えていたはずの感情が溢れ出てきて、目の前が真っ暗になる。
「違う。私は、信じない。」
そう言葉にすると、居ても立っても居られず、薄いカーディガンを引っ掴んで、外へと駆け出した。
私の家へ行けばきっと、A、そんなに慌ててどうしたのよ、とお母さんが微笑みながら言ってくれるはず。お父さんが、笑って頭を撫でてくれるはずよ。
そうひたすらに思って着いた我が家は、五条家に仕える人間で溢れかえっていた。
「A様?!お待ちください、通ってはなりません!!」
顔見知りの男性が、私の行方を阻む。
「どいて!!父は、母はどこ?!」
「A様!!いけません!!」
周りにいた他の人達も、私に気づき始め、なぜか全員で私の行方を阻もうとする。
「なんで?!どいて!!!どいてよ!!!」
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桜 - まさか…… (2022年8月1日 23時) (レス) @page33 id: eaa9446555 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 甘味!さん» 甘味!さん、いつもコメントありがとうございます。実はですね、あの人夏油さんじゃないんですよ…一個下の黒髪のあの人です。ななみんと同期の…更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2021年7月8日 19時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - プスメラウィッチさん» ごじょるオチです。ごじょるにしかおちません。 (2021年7月8日 1時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
甘味! - はい!夏油さんだと思いたいですっ(更新楽しみにしてます! (2021年7月7日 20時) (レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年7月1日 4時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2021年6月20日 0時