出会い。 ページ1
悟さんに初めてあったのは、6歳の、雪が寒椿にふりつもる寒い日だった。
その日は父の用事で五条家の本邸へ足を運んでいた。
鮮やかな赤椿の上に、ふわり、ふわりとかぶさってゆく真っ白な雪がとても印象的だったのを覚えている。
幼い私は、どうしてもその椿が欲しかったらしい。
落ちていた椿を拾いに行こうと、鼻緒に牡丹が描いてある草履に足をつっかけ、慣れない着物の裾をぱたぱたとはためかせた。
一輪の椿を、花びらが取れないようにそうっと拾い上げた。
その時の私は、あまりにも椿に夢中で気づいていなかったのだろうと思う。
おそらく三級と思われる呪霊が、側にいることに。
「ぱ、ぱぱ。ぱぱ、ぱぱ!!…いやっ、こないで!!ぱぱ!!助けて!!!!」
「うるさい」
その瞬間。
怖くて父を呼ぶことしか出来なかった私の声を遮り、誰かが呪霊を祓ってくれた。
「…おまえ、もがみのガキだろ。なんでここにいんだよ。」
「え、あ、たすけてくれて、ありがとう…わ、わたし、もがみA。あのね、ぱぱのおしごとで、ここにきたの。」
「ふーん。」
「あ、あなたは?」
「あ?なんだっていーだろ。」
「よくない。ままが、助けてもらったらおれいはきちんというのよって。」
「もういっただろ。」
「…そうだけど…ね、あなたのめ、とてもきれいね。ほうせきみたい。」
「…」
「わたし、あなたのめ、だいすき。…あ、まって…」
恋に落ちるには十分だったと思う。
きらきら輝いた錦糸のような髪。
真っ青な空を閉じ込めたような綺麗な瞳。
天使かと見間違えるほどの整った顔立ち。
彼は、私の王子様になった。
さっさと雪を踏みしめて去ってゆく彼の背中をぼうっと見つめ続けた。
「A!!どうしたんだ、何があった?!」
「ぱぱ…」
「A、大丈夫?怪我はしてないね?」
「きれいなおとこのこに、たすけてもらったの。」
「綺麗な男の子…ああ、悟くんのことか。…とにかく、怪我がなくて良かった。A、帰ろう。」
「うん」
母が待つ家へ帰っても、悟さんは私の頭の中から離れてくれなかった。
1週間後、彼との婚約が決まったときの興奮と喜びは、今でも覚えている。
学校の宿題がなかなか手につかないくらいに、舞い上がっていた。
嬉しくて、嬉しくて。
舞い上がる心を抑え込めなかった。
その1年後に、私は五条家で暮らし始めた。
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桜 - まさか…… (2022年8月1日 23時) (レス) @page33 id: eaa9446555 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 甘味!さん» 甘味!さん、いつもコメントありがとうございます。実はですね、あの人夏油さんじゃないんですよ…一個下の黒髪のあの人です。ななみんと同期の…更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2021年7月8日 19時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - プスメラウィッチさん» ごじょるオチです。ごじょるにしかおちません。 (2021年7月8日 1時) (レス) id: f9d6daf8b8 (このIDを非表示/違反報告)
甘味! - はい!夏油さんだと思いたいですっ(更新楽しみにしてます! (2021年7月7日 20時) (レス) id: f8e0e8f1cf (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年7月1日 4時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2021年6月20日 0時