第75話 ページ28
そう言ってこちらに歩いてきた木崎さん。
あの頃より髪色が落ち着いている。
俺を見るなり木崎さんの表情がみるみるうちに変わっていくのがわかった。
「あ…、あなた…あの子とあの時一緒に来た…」
「覚えていてもらえて良かったです。
今雄英の教師やってるんですけど、俺の生徒が拾ったらしくて」
そう言って俺はネームプレートを手渡す。
「あっこれ探してたやつ…
ありがとうございます、わざわざ」
安堵の息をついて受け取った木崎さんだが、ハッとした表情でこちらを向く。
「あの…これ拾ってくれた子ってもしかして…
鏡華によく似た…姿見Aさんですかね」
「ああ、はい。姿見が拾いました」
「…雄英体育祭。たまたま見てて目立っている子がいて、その子がとてつもなく鏡華に似ていたんです。
どこかで生きてたんじゃないか、だなんて考えもしたくらいで…」
俺はそんな木崎さんの言葉を聞いて、無意識に口を開いていた。
「姿見は、ある生徒の個性をバカにしたヒーローに大勢の前であるにも関わらず…
全国放送であるにも関わらず言い返しました」
「それ、私も見てました」
「俺も個性で学生の頃バカにされた事があって、その時いつもどんな相手であっても反野が助けてくれたんですよ。
とてつもなく似ているんです。姿見と反野は。
俺も同一人物ではないかと疑いました。
だけど姿見は俺を見ても動揺なんてしなかった。
それが現実ってやつだったんです」
俺は話を続けた。
「反野、俺らによく言ってました。
学校が1番楽しい、って。
あなたが反野に対してとった行動も態度も、決して許されるものじゃない。
だけどあいつはそんなあなたを助けました。
命を懸けてでも自分を苦しめたあなたの命を救いました。
だから、今からでも反野に謝ってください。
もう遅いが、馬鹿がつくほど優しい反野は今からでも許してくれるはずです。
あなたが誠実に生きていれば」
木崎さんは目に涙を溜めてこちらを向いている。
「はい…っ」
「じゃあ俺は帰ります」
「あの、ちょっと待ってください!」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ある x他1人 | 作成日時：2020年2月27日 21時
