第60話 ページ13
「よっ、心操」
「なに?」
相変わらず無愛想な表情で心操は振り向く。
「頑張れよ〜!応援してっからなこのボクが!!安心しろ!」
「お前のクラスメイトと戦うのにいいのか?」
「大丈夫大丈夫〜。
ボク1人の応援で1000人分だから堂々と行ってこぉい!!」
「どう頑張ってもお前は1人分だ」
「比喩表現につっこむなし」
この時、心操が心の奥底ではボクに感謝を告げている事なんてボクは全く知らない。
·
《レディィィ!スタート!!》
心操VS緑谷戦は緑谷が心操に煽られた事によって喋った。
緑谷は心操の命令で場外に出ようとする。
その時、昔から聞き覚えのある声が、小さかったけれど聞こえた。
「わかんないだろうけどこんな個性でも夢見ちゃうんだよ。さあ負けてくれ」
戦闘向きではない個性。最前線で戦う事は難しい。
だからこそあの試験はクリア出来なかった。
それに、昔から一緒にボクが居たから、
比較的戦いやすい個性のボクが居たから、
その時、大きな音が鳴った。
「まずいなぁ…」
「何がだい?」
と隣の飯田はハテナを浮かべる。
「いや、見てみ?そしたらわかる」
緑谷の指は2本紫色に変色している。
指を爆発させて自分自身に衝撃を与えたのだ。
心操の洗脳は衝撃をあたえる事が解く事の条件。
「体の自由はきかないハズだ。何したんだ!?」
心操の悲痛な声が聞こえる。
「俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。
俺は恵まれないのに隣に居るヤツは恵まれた。
そんな気持ちも分からないだろうが。
恵まれた人間にはわからないだろ。
誂えむきの個性に生まれて望む場所へ行ける奴らにはよォ!」
申し訳ないなぁ、なんだか。
正直、昔から若干気付いていた。
ボクが隣にいる事で惨めな思いをしている事。
ボクだってそこまで強力な個性な訳ではない。
だけど"他人に直接害を与える事が可能な個性"という時点できっと心操にとって羨ましがられてたんだと思う。
結果は心操の場外。緑谷の勝利。
「かっこよかったぞ心操!」
普通科の人達は暖かい言葉をかけた。
ヒーローサイドの言葉も暖かい。
良かったじゃんか心操。
が。ボクはその中の1つを聞き逃さなかった。
「でもな〜あ、最前線ではなあ…
そういう場では使えないよな、あーゆー子は」
そんなプロの声が聞こえてしまった。
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作者名：ある x他1人 | 作成日時：2020年2月27日 21時
