第一幕 輝きの音を追って ページ7
それからいく年が経って、ボクは中学生になった。幼少期より背は高くなって手も大きくなり、高難度の曲にだって挑戦するようにしている。今ではA〜F(Fのほうが難しい)の中、Cくらいの難易度であればさっと譜読みした後すぐに弾けるくらいの実力がついた。
世間は、ボクを天才だと持て囃す。
「お、おいあれ見ろよ……」
「朱雀姫名！？ 本当にうちの中学にいたのか」
「可愛いなぁ〜……でも近寄りがてぇ〜……」
「あったりまえだろ！ 名家の御令息、授業は出なくてもテストは毎回上位三位には入っててあの見た目、さらに天才ピアニスト！ 近寄りやすい方がおかしいだろ！」
「え、そんな感じなのあの子！」
「ピアノ齧ってるやつで朱雀姫名の名前を知らない奴はいないぜ。ヤマセンだって朱雀に関しては放置だ」
「ヤマセンって音楽の！？ ほんとに天才なんだな……」
ざわざわ、ざわざわ。
久々に学校に来てみればそんな噂をヒソヒソと。陰口も叩かれてるみたいだけれど、褒め言葉も陰口もどうでもいい。
こちらを指差して持て囃す人間をチラッと見て視線を戻す。人の噂は七十五日。気にしていたらやってられない。堂々とスマホを取り出してイヤホンをつければ、音源を再生。何度も何度も聴いた曲を。
(──やっぱり、最初の一音から完璧……)
天馬司は、多分もう会わない、の言葉通りコンクールに出場しない。音源の残るコンクールは特に。
あの演奏以降ピアノ業界から何度も声は掛かっているのに、頑として表に出ない。
(逃げた負い目もあるし、連絡もつかない。司と話すこともあれ以降ないけれど……)
ボクはといえばとにかく手当たり次第コンクールに出ては賞を取っていた。最初は司が次にどのコンクールに出るかわからなかったからだが、コンクールに出るという経験自体が糧になることを知ってからはそれ目的で出るようになって。
そのせいで天馬司の名前が轟く前に、並み居るコンクールで数多の賞を受賞した『天才』の名前が上がるようになってしまったのだ。
(天馬司……今はどこまで弾けるんだろ)
何か意味があるのか、惚れ惚れするほどの才能があるくせ司は音源を残さない。司の弾いた譜面、ピアノの種類全て把握しているボクすら彼の音源は初出場の神山での分しか持っていないのだ。
公式SNSも(一般人扱いなので当然だが)無いし。
「おや？ 珍しいお客さんだね」
「？」
気が付けば、ボクは屋上にいた。音に聞き入りすぎたらしい。
重い扉の奥から青空が見える
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ゆめ(プロフ) - りんごさん» 本当ですね！ 訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます！ (2022年10月25日 7時) (
レス) id: cefb73a9d4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ，フラ立ってますよ！ (2022年10月25日 6時) (レス) id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：文字書きの端くれ | 作成日時：2022年10月25日 0時
