にっこりわんだほい！ ページ23
どーんっ、と可愛い効果音では表現しきれないほどの衝撃が身体中に打ち付けられる。思わず地面に転がり、咄嗟に庇った手に怪我がないことを確認して、飛びついてきた子を怒鳴り付けた。
「えむ！ 人に飛びつくなって、何回言ったらわかるわけ！？」
「ごめんなさいっ！ でもでも、姫名くん久しぶりだねっ！ 中学校楽しいっ？」
「別に普通だよ、普通！ 全くはしたない……」
ぴょこっと起き上がり、先生に質問する時みたいに手を挙げるのは鳳えむ。鳳家のご令嬢であり、遊園地を経営している生粋のお嬢様なのだ。うちの祖父も、彼女の祖父に随分助けられたと聞く。
「あっはっは、お久しぶりですえむお嬢様」
「大和お兄さん、こんにちは！」
「元気で何より。その元気さをぜひ、うちの坊ちゃんに分けて欲しいもんなんですがね〜」
勝手なことを。運転手は車にこもってろと言わんばかりに向こう脛を蹴り、ひとまず屋敷の方へ戻ることにした。用事はわかっているのだけれど。
「勘弁してよね、えむ。オマエのご機嫌取りのためにボクが遣わされたってこと？」
「ふぇ？ お兄ちゃんからは、姫名くんのために屋敷にいくよーって言われたよ？」
えむは不思議そうな顔で首を傾げる。その純粋な顔に申し訳なくなり、ため息をついた。なんというかこの子は苦手だ。友人としてならともかく、どうしても婚約者としては見れない。
「……じゃあ父さんたちか。それはごめん」
「ううん！ ぜんぜん会えてなかったから、元気そうでよかったよー！」
にっぱりと輝く笑顔。えむは許婚の意味をわかっているのだろうか……分かってなさそう。
えむをエスコートして朱雀邸の扉を開ける。広いポーチ、エントランスへ伸びる階段。そのままパーティ会場になるそこは飾り付けられ、各家の令嬢、令息が仲を深めていた。
「げ……」
「あ、おねえちゃーん！」
「ばかっどう見ても夜会中！」
えむの姉であるひなた嬢がこちらに気付き、可憐な笑顔を見せる。えむもボクも当然ドレスコードは守っている──婚約者同士で会うとはいえ、最低限のマナーだ──が、ボクがえむをエスコートしての登場なんて、婚約関係を見せつけるようなものだ。
「ええっ！？ どうしよう姫名くんあたし社交界わかんないよ……！」
「今それどころじゃない！」
「それ以上に大事なことが！？」
えむが声を潜めて囁いてきたがそれどころではない。
くそ、やられた。ボクが婚約関係に積極的でないからだろう、外堀を埋められている。
続く
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ゆめ(プロフ) - りんごさん» 本当ですね！ 訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます！ (2022年10月25日 7時) (
レス) id: cefb73a9d4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ，フラ立ってますよ！ (2022年10月25日 6時) (レス) id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：文字書きの端くれ | 作成日時：2022年10月25日 0時
