仮初だらけの ページ21
「……ボクのショーじゃないけど。邪魔しないならいいよ……」
「やった！」
「わーっ！」
きゃっきゃっと歓声を上げる二人の頭をいい加減練習しろと軽く叩き、興奮冷めやらぬ様子に頭を抱えた。頭痛薬、いるかもしれない。
「ただし」
「「ただし？」」
せめて練習は遅らせてなるものか、と二人に指を突きつける。
「ショーまでに、その練習帳に載っていることをマスターして」
「え」
「この……ご主人様の？」
「そう。練習帳。基礎的なことしか書いていないんだから、このボクが本来教えるまでもないんだ」
もう一段階レベルの高いものはすでに用意してある。練習帳自体も相当薄いものであるし、書いてあることもピアノを曲がりなりにも弾く人間なら当たり前のこと。天馬司はもちろん、ピアノを一切やっていないであろうあの神代類も理解出来るだろう。
「えぇっでも……」
「ご主人様が、せっかく僕らのために用意してくれたのに……」
「オマエたちがまともに弾けないとその用意も無駄になるの。分かりきったこと言わせないでくれる？」
目を合わせて困った顔をする二人に大きくため息をついて、額をこづく。
なんとなくわかった。こいつら、自分達が気に掛けられていることを理解できていない。
長い間誰もいなかった弊害なのか、すぐボクに捨てられると思っている。その思考を裏付けるようにレンとリンは驚き、すぐ心底うれしいです、みたいな顔して笑顔になる。
「ほんと？」
「一回面倒みるって言ったら投げ出さない。どれだけ無能な生徒でもね」
そもそも、天馬司の音に対する執着はこの程度でへし折れない。折れたらもっと、自分で言うのもなんだけど楽な人生を送れてる。
馬鹿馬鹿しいとため息をついて、しっしっと手を動かした。
「分かったら練習に戻る！ ボクはしばらく来ないから、ショーの前日までに完成してなかったら絶対見せないからね！」
「「は、はーいっ！」」
急いでピアノに戻ったリンの背中を見て、自分も作業に戻る。隣でレンが歌うように声を上げた。
流石はボーカルロイドと言うやつだろうか？ その声は力強く、歌声だけで言えば充分合格点だ。調節してやれば、もっといい歌を、いい声で歌えるだろう。
「レン、感情を声に乗せすぎ。音が外れた」
「ご、ごめんなさーい」
「もう一度最初から」
しかし天馬司はピアニストで、目指す場所は違う場所。音が外れるなんてことは基礎の状態であってはならない。天馬司は音を外さない。音の色だけを違えるのだ。
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ゆめ(プロフ) - りんごさん» 本当ですね！ 訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます！ (2022年10月25日 7時) (
レス) id: cefb73a9d4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ，フラ立ってますよ！ (2022年10月25日 6時) (レス) id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：文字書きの端くれ | 作成日時：2022年10月25日 0時
