ピアノの世界 ページ13
レモンピールのいい香りがして戸惑っていると、レンまでもふもふと布団の上を走ってくる。
「一人だけずるいじゃないか! 僕だってご主人様と遊びたいんだから!」
「まぁレン、姉の私に逆らうつもりなのね?」
「姉じゃないだろう! 都合の良い時だけそんなこと言って!」
そしてもう片方からぎゅうっと抱きつかれ、吐息が耳にかかる。というかそこで言い争わないでほしい。
ボクは眉を顰め、二人の肩をそっと掴む。
「ええーい! 離れてよね! このボクの繊細なお耳が壊れちゃうでしょ!」
「「ええ〜」」
えぇ、じゃない! ベリっと引き剥がせば双方から不満そうな声が上がる。ボクはため息をついて、スマホを起動した。
「ボクは忙しいの。こんな与太話に付き合ってる暇ないんだよ」
「で、ですけれどご主人様! 私達の話は信じてほしいのですわ!」
「そうだよ! ここはご主人様のセカイで、ご主人様の想いが所以にこうなってるんだ!」
必死に訴える二人。ボクは狭い部屋を見渡して、そうだろうねと呟いた。星の形をしたライト、暗い夜を思わせる月、朝焼けのような色をしたレースカーテン。
──そしてあの時、コンクールに使われていたものとそっくり同じな椅子、ピアノ。
狭い、閉鎖的な部屋でぎゅうぎゅうに詰められたそれらは確かにボクを構成するもので、ため息を吐く。
「だから何。ボクがここに留まる理由にはならない」
そんなぁ、と双子が声を上げる。いよいよスマホを起動し、untitledと書かれている音源──どうせこれが原因なのだろう──を止めようとすれば。
「待って!」
「……リン?」
「せめて、私達の演奏を聞いてから判断してほしいですわ」
リンがボクの手を掴み、真っ直ぐに見据えてくる。その気迫に気圧されて唾を飲み込めば、レンもそうだよ、と参戦してきた。
「僕達はきみをずっと待っていたんだ。そのくらい聞いてくれるよね」
まっすぐな言葉に一瞬迷い──しかたないな、と布団に座ってクッションを抱えた。
「聞かせてみなよ。心動かされるかは別だけど」
「! ありがとうございます!」
「やったね、リン、隣に座って!」
いそいそとピアノの前に座るレンと、その隣にリンが座った。何も言わず見ていると、二人はスゥッと息をそろえ──同時に手を下ろした。
(きらきら星変奏曲、連弾か……)
モーツァルトの編曲したピアノ曲で、難易度は中の上程度。しっかり練習したのなら、弾けて当然だが
(これは……!)
ボクは目を見開いた
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ゆめ(プロフ) - りんごさん» 本当ですね! 訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます! (2022年10月25日 7時) (レス) id: cefb73a9d4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ,フラ立ってますよ! (2022年10月25日 6時) (レス) id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文字書きの端くれ | 作成日時:2022年10月25日 0時