序幕 姫と王子 ページ2
ずっとずっと、歓声も褒め言葉もボクのものだった。
『姫名くんは可愛いね』『姫名ちゃんは良い子で羨ましいわぁ』『またコンクールで賞取ったの！？ 姫名は凄いねぇ！』
数えきれないほどそう褒められたし、ピアニストの両親からもお付きの執事からもずっと愛されて甘やかされてボクはピアノを弾いていた。誰にも負けない自信があった。
地方の小さいコンクールで賞を取っては褒められて、ボクが一番になり続けた。
ライバルはあの青柳冬弥だけ。人生なんてちょろいもの──
そう思っていた。あの日までは。
🌸🌸🌸
「もうっ、なんでお休みの日にコンクールなんてあるの！？」
「ごめんね姫名。でも毎年出てるから、みんなも姫名の演奏を楽しみにしてるはずよ」
「分かってるけどさぁ……」
お母さんに宥められ、少し遠出。神山の方まで出向いてコンクールに出場するらしい。とは、行きの新幹線で聞かされた。
ボクは文句を言いながらも自分の足で会場に歩いていたし、楽屋にだって自分で地図を見て向かった。
お母さんは、その場にいた他の人のお母さんとおしゃべりに夢中で気付いてなかったけど。
またボクの自慢話でもしてるんだろう。
「朱雀姫名、入りま〜す」
テレビで見た挨拶を口に出しながら楽屋の扉を開ける。いつもと変わらない面々が姫名ちゃん久しぶり、と声を上げた。
同じくらいの男の子女の子が同じ部屋に詰め込まれ、譜面を見ては指先を動かす。いつも通りさっさと人波から逃れ自分も譜面を取り出して静かなところを探して周りを見渡した。
「……？ 誰？」
ボクの呟きは誰にも拾われなかったみたい。人波から離れたところ、ぽつんと見たことのない子が座っていた。
(あんな子、見たことない……)
短く切られた金髪が、俯くのに合わせてサラッと揺れる。カッターシャツにニットベストという上品な装いもあり、一瞬性別がどちらか分からなくて。
その子は何をするでもなく、ぼうっと譜面を見つめていた。
「ねぇ、キミ、練習しなくていいの？」
「……？」
「いやキミだよキミ。そこの金髪の子」
周りに誰もいないのにキョロキョロ辺りを見回すその子に笑いつつ、隣の席に腰掛ける。ボクより少し背の高いその子はパチクリと大きな目を瞬かせた。
……綺麗な子だな。
「オレ、のことか？」
「そ。ぼーっとしてるみたいだから、気になってさ」
男だったんだ。彼はどこかぼんやりと首を傾げ、ふむ、と唸り声のようなものをあげた。
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ゆめ(プロフ) - りんごさん» 本当ですね！ 訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます！ (2022年10月25日 7時) (
レス) id: cefb73a9d4 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ，フラ立ってますよ！ (2022年10月25日 6時) (レス) id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：文字書きの端くれ | 作成日時：2022年10月25日 0時
