チビっ子と ページ11
結香がまだ、一匹の野狐であった頃。
未だ江戸幕府が栄え、武士や農民の差があった頃。
イタズラ化け狐として名を馳せていた結香は幼い妖怪達を束ね、守っていた。
「はい、今日の授業はここで終わり。
みんな気をつけて帰れよー」
「「はぁーい！」」
出雲にある名もない山の奥、寂れた神社で僕は子供達に授業の終わりを告げた。
お化けにだって学は必要だ
人を化かす、悪戯するのは二の次。
人にとけ込み、生き残る方が大切である。
力は長く生きていればいるほどついてくる。
ぱらぱらと神社から出ていく子供達を見送って、僕は一息ついた。
「子供の世話は疲れるな……」
住み着いている本殿の方に戻ろうとすれば、ちかりと目の奥でなにかが光る。
「？」
反射的に振り向き、息をのんだ。
「春霞か……」
沈み行く夕日に彩られ、雲が美しく色付いている。
思わず漏れた感嘆の息は、誰にも聞かれることなく目の前の美しい景色に吸い込まれていった。
ぼんやりとそれを見ながら本殿の方に歩いていく。
すると、珍しい人影が鳥居の方に来ていることに気がつく。
やれやれ、しばらく休憩させてもらえないようだ。
鳥居の近くにうずくまる、長い白髪の少女に近づいて、話しかけた。
「どうした？チビっ子」
「……チビっ子じゃないの」
「はは、悪かった。どうした？ゆき」
ちらりとこちらを見上げた少女の瞳は、濡れ羽色と言われる蒼がかった艶のある黒だ。
鮮やかな赤地の着物に、山吹色の帯、純白の桜は彼女によく似合っている。
日に透ける白髪は幻想的で、腰辺りで切り揃えられていた。
彼女は有希寝。雪女だ。
「ゆき、そんなところでうずくまっていては折角の着物も、ゆきの綺麗な白髪も汚れてしまうだろう。
おいでゆき。お茶くらいは出すよ」
こくん、と頷いたゆきをひょいっと抱えあげ、今度こそ本殿に歩いていった。
奥座敷にゆきを座らせ、最近行商人から買ったオレンジフラワーのハーブティを渡す。
楽市楽座で陶器市をやっていたので何となく買った綺麗な陶器のティーカップが役に立ったようだ。
「これ、なに……？」
「甘くて美味しいよ。飲んでみな」
湯飲みに入れた深蒸し茶を飲みながら薦めると、ゆきはこくんと頷いてゆっくり口のなかに入れた。
そして、目を輝かせた。
「おいしい……」
「ん。でしょ？」
ほっぺたを真っ赤にしておいしい、と繰り返すので、眷属を通じて親御さんについオレンジフラワーを送り付けた。
どうせ原因アイツ等だろ。反省しやがれ
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ちゃっぴー(プロフ) - エスカルゴさん» ありがとうございます！こちらも載せました！ (2019年6月5日 20時) (
レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
エスカルゴ(プロフ) - ちゃっぴーさん» 勿論です！心配をお掛けしてすみません。もう設定したので全体公開にしました！ (2019年6月5日 20時) (レス) id: d6c730a35c (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぴー(プロフ) - エスカルゴさん» 返信ありがとうございます！何かあったのかと不安になってつい聞いてしまいました……すみません。見れるようになったらで良いので派生作品欄に載せてもよろしいでしょうか？ (2019年6月5日 19時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
エスカルゴ(プロフ) - ちゃっぴーさん» あ、今フォントとかの実験中なだけです。すみませんちょっとあぁ言うの苦手で、色々ぽろぽろこぼしちゃいそうだったので…… (2019年6月5日 19時) (レス) id: d6c730a35c (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっぴー(プロフ) - エスカルゴさん» 失礼致します。結香様の過去話が友達申請者のみの観覧となっていますが、何か不都合などありましたか？ (2019年6月5日 19時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エスカルゴ | 作成日時：2019年3月29日 11時
